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せん閣油田の開発と真相/ その二つの側面
原文表記
せん閣油田の開発と真相 その二つの側面
南西新報 昭和四十五年八月二十一日
現在、同油田をめぐつて国際利権が暗躍し、一刻の猶予もならぬ事態を迎えている。そのように緊迫した状況にありながら、肝心の地元沖繩側がその存在に〝今尚調査中との世論操作にまん着されていることは何故か?近視眼的発想で埋蔵の断定、果てはせん閣油の信ぴよう性検討或はそれに伴う石油資源開発推進委員会の設置等は、時期尚早と見はなし、その問題を等閑視しているのは全く危険なことである。更に悲しむべきは現在危機直面しているこの事態を、住民とは何の関係もない山師たちの単なる一攫千金目当ての宝捜しか、或は〝幻の油田〟をめぐる利権争いの活劇としそのようながん迷固■な感覚は、尻に火がついてからでは動きがたらない、伝統的(?)な島国根情のなさしめるところか歴史的両属の民の発想に由来するものであろうか、はたまた〝石油資源の開発〟というあまりのスケールの大きさに喫驚し、わがこととしての実感が湧いて来ぬせいなのか判断に苦しむところである。
せん閣油田の鉱業権が外資にのつとられ、全ての権益を収奪された後では、後世に悔いを残し永久に千載一過の好機を失うことになり一切が従労に帰するであろう。
十二、結び―地元サイドによる開発確保のために―
幸いにせん閣油田の中すう部の鉱業権は、地元住民側に属している。
今こそ同油田の価値の重大性を認識し、住民一丸となつて、この権益の地元側による確保と、利権協定による沖繩サイドの開発に起ち上るべきである。
前述の産油国の例をみるまでもなく、中東、東南アジア等のいかなる後進国に於いてもその開発契約は、自国の有利な条件でなされている。然るに文化を誇る沖繩だけがその開発に鈍渋していることは甚だ怪と云うべきである。
私は繰りかえし再度強調する。
せん閣油田の開発は将来の沖繩の経済、更には日本全体の経済構造を根底から覆す程の重大なものである。従つてその問題の処理はこれまでのように単なる一部の人の思惑や、あるいは政治的裏面工作等に左右される性質のものでもない。
然もそれは、沖繩住民全体の唯一最大の共有財産となるものであり、当然、住民に還元されるべきものである。
同油田は沖繩の「史上最大の住民生活の向上と福祉等をもたらす金の卵でもある」そのため火急の策として琉球政府の主体ある方策の樹立とこの問題に対する住民の新たなる認識と奮起が望まれる。
せん閣油田の開発の態様如何が、復帰後の自立経済県として沖繩の長き将来の繁栄の命運を決する重大なカギとなることから、住民の意志を代表する立法院をはじめとして市町村会等の地方諸議会、諸団体が超党派的にその問題にとり組み、充分なる力量を発揮すべき時期にあることを最後に強調して本稿の結びとする。
つづく
現代仮名遣い表記
せん閣油田の開発と真相 その二つの側面
南西新報 昭和四十五年八月二十一日
現在、同油田をめぐって国際利権が暗躍し、一刻の猶予もならぬ事態を迎えている。そのように緊迫した状況にありながら、肝心の地元沖縄側がその存在に〝今尚調査中との世論操作にまん着されていることは何故か? 近視眼的発想で埋蔵の断定、果てはせん閣油の信ぴょう性検討或はそれに伴う石油資源開発推進委員会の設置等は、時期尚早と見はなし、その問題を等閑視しているのは全く危険なことである。更に悲しむべきは、現在危機直面しているこの事態を、住民とは何の関係もない山師たちの単なる一攫千金目当ての宝捜しか、或は〝幻の油田〟をめぐる利権争いの活劇とし、そのようながん迷固■な感覚は、尻に火がついてからでは動きがたらない、伝統的(?)な島国根情のなさしめるところか、歴史的両属の民の発想に由来するものであろうか、はたまた〝石油資源の開発〟というあまりのスケールの大きさに喫驚し、わがこととしての実感が湧いて来ぬせいなのか、判断に苦しむところである。
せん閣油田の鉱業権が外資にのっとられ、全ての権益を収奪された後では、後世に悔いを残し、永久に千載一過の好機を失うことになり、一切が徒労に帰するであろう。
十二、結び―地元サイドによる開発確保のために―
幸いにせん閣油田の中すう部の鉱業権は、地元住民側に属している。
今こそ同油田の価値の重大性を認識し、住民一丸となって、この権益の地元側による確保と、利権協定による沖縄サイドの開発に起ち上るべきである。
前述の産油国の例をみるまでもなく、中東、東南アジア等のいかなる後進国に於いてもその開発契約は、自国の有利な条件でなされている。然るに文化を誇る沖縄だけがその開発に鈍渋していることは甚だ怪と言うべきである。
私は繰りかえし再度強調する。
せん閣油田の開発は将来の沖縄の経済、更には日本全体の経済構造を根底から覆す程の重大なものである。従ってその問題の処理はこれまでのように単なる一部の人の思惑や、あるいは政治的裏面工作等に左右される性質のものでもない。
然もそれは、沖縄住民全体の唯一最大の共有財産となるものであり、当然、住民に還元されるべきものである。
同油田は沖縄の「史上最大の住民生活の向上と福祉等をもたらす金の卵でもある」そのため火急の策として、琉球政府の主体ある方策の樹立とこの問題に対する住民の新たなる認識と奮起が望まれる。
せん閣油田の開発の態様如何が、復帰後の自立経済県として沖縄の長き将来の繁栄の命運を決する重大なカギとなることから、住民の意志を代表する立法院をはじめとして、市町村会等の地方諸議会、諸団体が超党派的にその問題にとり組み、充分なる力量を発揮すべき時期にあることを最後に強調して本稿の結びとする。
つづく