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沖繩せん閣列島を守る会結成 趣意書

掲載年月日:1970/8/7(金) 昭和45年
メディア:南西新報 2面 種別:記事

原文表記

沖繩せん閣列島を守る会結成 趣意書
南西新報 昭和四十五年八月七日

結成準備会 (1)
米海軍及び国連のエカツフエ(アジア極東経済委員会)の調査によつて「ペルシヤワ湾にも匹敵する大油田が沖繩のせん閣列島周辺で発見され、世界の注目をひいている。
 この油田をめがけて、世界的巨大な資本の群れが、基地作りに狭ほんしているたとえば、せん閣油田北方延長線上にある男女列島(長崎県)には、カルテツクス(米)と日本石油が一〇〇〇万ドルを投じて採鉱開発をしており、それに隣接する韓国の海域にはガルフ(米)が、日本との境界の設定をするのにむずかしい海域にはシエルとカルテツクスが、また、せん閣列島南部海域に隣接する沖ではガルフと台湾石油公司(中華民国)が契約を結び、そして台湾海峡の他の鉱区ではエツソ(米)が、その準備をととのえている。
 これらの巨大な国際資本は、いずれもせん閣列島周辺にある世界的大油田の開発にのり出そうと、うの目たかの目になつている。すでに沖繩本島に進出しているガルフ、エツソ、アルコア等の企業は、このせん閣列島の油田を目当にしているとみられている。
 また、日本石油開発公団(金額政府出資)は、〝沖繩の本土復帰で、同海域が日本領海になる日に備えての鉱業権の確保とせん閣油田への進出〟を意図していることを、池部探鉱部長の談であきらかにした。
 このように、沖繩県民の権利が、世界的巨大な資本に侵犯されようとしていることは、まことに由々しい問題である。
 経済的価値がなく、自立など問題にならないとされていたその沖繩の海底にある資源が持ち去られようとしている。
せん閣列島油田開発のために、百万県民にかわつてその鉱業権を守るために十九年間も苦斗をつづけ、百万住民の権利を確保するために、それを侵犯する外圧に耐えぬいてきた大見謝恒寿という人物が出現したのである。
 彼は、〝県民の鉱業権を守れ〟と、次のように訴えている。
〝せん閣油田の中すう部はほぼ私が一九六六年から一九六九年にかけて鉱業権を出願してありましたので、公団側(日本石油開発公団)は、私を懐柔して、私の先願にかかる鉱業権を取得しようと種々画策してきました。しかし、私は沖繩側の利益を守るために権利(鉱業権)そのものを譲渡するわけにはいかないと一貫してこれを拒否してきました。それは、もし鉱業権を譲渡したら、石油開発の主体が公団の手に移り、地元沖繩はつんぼさじきにおかれ、開発に伴う経済メリツトも全く沖繩を素通りしてしまうことは明らかであります。(中略)
 私はこの十九年間、沖繩の地下資源をとおして、廃藩置県以来宿命的に困窮した貧乏県を精神的び縮と物質的貧困から脱却し、沖繩の繁栄と福祉に寄与したいと信念と使命感をもつて、せん閣列島にまたがる石油天然ガス資源の開発に独力で取りくんでまいりかした(中略)
 しかるに、本土公団側は鉱業権の譲渡について、私が応じないとみるや今度はいわば「挙国一致の体制」で〝あらたな立法処置を講じてでも地元沖繩から、せん閣油田の鉱業権を奪取する〟と公言するようになつてきました。
 せん閣油田の開発は、将来沖繩の経済開発、いや日本全体の経済構造が根底からくつがえるほど巨大なものであり、それは決して一部の人々の私利、私欲や政治的裏面工作によつて左右されてはならないと思います。(中略)
 復帰を前提とした本土サイドのこのような不当な圧力に抗して、地元せん閣石油資源の死守と沖繩サイドによる開発のために県民自身が、今こそ自らの権利を守るために起ち上らねばならないときである。〟
 この大見謝さんの沖繩を熱愛する叫びを島じゆうの人々に伝え、せん閣油田とその開発の県民の権利を守り、自立と自治と繁栄の沖繩の新しい時代をつくる県民運動をまき起そう。

現代仮名遣い表記

沖縄せん閣列島を守る会結成 趣意書
南西新報 昭和四十五年八月七日

結成準備会 (1)
米海軍及び国連のエカッフェ(アジア極東経済委員会)の調査によって「ペルシャワ湾にも匹敵する大油田が沖縄のせん閣列島周辺で発見され、世界の注目をひいている。
 この油田をめがけて、世界的巨大な資本の群れが、基地作りに狂奔している。たとえば、せん閣油田北方延長線上にある男女列島(長崎県)にはカルテックス(米)と日本石油が一〇〇〇万ドルを投じて採鉱開発をしており、それに隣接する韓国の海域にはガルフ(米)が、日本との境界の設定をするのにむずかしい海域にはシェルとカルテックスが、また、せん閣列島南部海域に隣接する沖ではガルフと台湾石油公司(中華民国)が契約を結び、そして台湾海峡の他の鉱区ではエッソ(米)が、その準備をととのえている。
 これらの巨大な国際資本は、いずれもせん閣列島周辺にある世界的大油田の開発にのり出そうと、うの目たかの目になっている。すでに沖縄本島に進出しているガルフ、エッソ、アルコア等の企業は、このせん閣列島の油田を目当にしているとみられている。
 また、日本石油開発公団(金額政府出資)は、〝沖縄の本土復帰で、同海域が日本領海になる日に備えての鉱業権の確保とせん閣油田への進出〟を意図していることを、池部探鉱部長の談であきらかにした。
 このように、沖縄県民の権利が、世界的巨大な資本に侵犯されようとしていることは、まことに由々しい問題である。
 経済的価値がなく、自立など問題にならないとされていたその沖縄の海底にある資源が持ち去られようとしている。
せん閣列島油田開発のために、百万県民にかわってその鉱業権を守るために十九年間も苦闘をつづけ、百万住民の権利を確保するために、それを侵犯する外圧に耐えぬいてきた大見謝恒寿という人物が出現したのである。
 彼は、〝県民の鉱業権を守れ〟と、次のように訴えている。
〝せん閣油田の中すう部はほぼ私が一九六六年から一九六九年にかけて鉱業権を出願してありましたので、公団側(日本石油開発公団)は、私を懐柔して、私の先願にかかる鉱業権を取得しようと種々画策してきました。しかし、私は沖縄側の利益を守るために権利(鉱業権)そのものを譲渡するわけにはいかないと一貫してこれを拒否してきました。それは、もし鉱業権を譲渡したら、石油開発の主体が公団の手に移り、地元沖縄はつんぼさじきにおかれ、開発に伴う経済メリットも全く沖縄を素通りしてしまうことは明らかであります。
(中略)
 私はこの十九年間、沖縄の地下資源をとおして、廃藩置県以来宿命的に困窮した貧乏県を精神的び縮と物質的貧困から脱却し、沖縄の繁栄と福祉に寄与したいと信念と使命感をもって、せん閣列島にまたがる石油天然ガス資源の開発に独力で取りくんでまいりました。
(中略)
 しかるに、本土公団側は鉱業権の譲渡について、私が応じないとみるや、今度はいわば「挙国一致の体制」で〝あらたな立法処置を講じてでも地元沖縄から、せん閣油田の鉱業権を奪取する〟と公言するようになってきました。
 せん閣油田の開発は、将来沖縄の経済開発、いや日本全体の経済構造が根底からくつがえるほど巨大なものであり、それは決して一部の人々の私利私欲や政治的裏面工作によって左右されてはならないと思います。(中略)
 復帰を前提とした本土サイドのこのような不当な圧力に抗して、地元せん閣石油資源の死守と沖縄サイドによる開発のために県民自身が、今こそ自らの権利を守るために起ち上らねばならないときである。〟
 この大見謝さんの沖縄を熱愛する叫びを島じゅうの人々に伝え、せん閣油田とその開発の県民の権利を守り、自立と自治と繁栄の沖縄の新しい時代をつくる県民運動をまき起そう。