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無人島探訪記(五)

掲載年月日:1950/5/7(日) 昭和25年
メディア:南琉タイムス 1面 種別:記事

原文表記

無人島探訪記(五)
南琉タイムス 昭和二十五年五月七日

    高 良 鐵 夫
數十年は前醱の島の海洋鳥及び鳥糞が資源として重寶がられ當時移■産物になつていたという 日は既に西海■傾いて居り 夕陽あびながら宿榮地に歸る 沿岸植物を求めて■■西海岸を南進するこれ又砂地が始んど■く北岸と同様に第三紀砂岩が汀線に傾斜ユ露■て居りあるいは所々に珊瑚礁が舞台狀に綠している 從つて砂地植物は殆んどなく岩上にイヌマキ マサキ カジマル等が生えて居りその生態分布の狀况は沿岸と大した差はない 鳥類ではリユウキユウアカシヨウビン シロサギが目につく
第三紀砂岩の斷崖絶壁に遭遇して路頭木迷う 仕方がないので草を踏み分けて斷崖上を宇廻したが再び斷崖に遭遇してしまつた
進退極つて進むことが出來ない
進路を變えて後退し汀線の斷崖を下ることにした 装具が邪まになるので先づ双眼鏡 水筒胴乱等を繩で下にし裸足で一歩一歩下る 眼下には砂岩の大が ころがつて居り崖に岩コケが生えている 時々すべつて頭の毛がさつとする 漸く地獄を通り汀線上を南海岸に廻つたがここで再び火山岩の絶壁に遭遇した 眼下は靑海原であり完全に進路を阻止された 東方には北小島 南小島が手に取るように見える 魚釣島南岸の斷崕上には岩骨の突出 た山があり近くの崕はテツポーユリ キキヨウラン サクララン が見える 海岸にはヒノキ カタン ラワン 米松 スギ等の流木が打ち上げられているが何れもフナクムシが深く侵入して居る 用材としての價値なく薪以外には利用出來ない しばらく休息の後再び地獄崕を通つ■歸路につく
 大じや生捕
明けて三十一日島の縱横斷を計畫し島の最高点を指して早朝出發した 勿論道はない自ら路をきりひらいて進まねばならぬ不利を■ぬ■れな■沿岸の灌木層から喬木層に入る山中には大小幾多の岩が重つて居りしかもコケが生えいるので容易に進めない 晝尚暗い密林がある ブタノキ イヌマキ等■■材資源が目につ■■の小さい黒鳩がビロウの葉をばたばたたたいて飛び去る アツマイマイが時々目につく 羅針盤を取り出して淮む二時間經過の後漸く南岸の絶壁上に出た
          【續】

現代仮名遣い表記

無人島探訪記(五)
南琉タイムス 昭和二十五年五月七日

    高 良 鐵 夫
数十年は前発の島の海洋鳥及び鳥糞が資源として重宝がられ、当時移■産物になっていたという。日は既に西海■傾いて居り、夕陽あびながら宿栄地に帰る。沿岸植物を求めて■■西海岸を南進する。これ又砂地が始んど■く北岸と同様に第三紀砂岩が汀線に傾斜ゆ露■て居り、あるいは所々に珊瑚礁が舞台状に縁している。従って砂地植物は殆んどなく岩上にイヌマキ、マサキ、ガジュマル等が生えて居り、その生態分布の状况は沿岸と大した差はない。鳥類ではリュウキュウアカショウビン、シロサギが目につく。
第三紀砂岩の断崖絶壁に遭遇して路頭木迷う。仕方がないので草を踏み分けて断崖上を宇廻したが再び断崖に遭遇してしまった。
進退極って進むことが出来ない。
進路を変えて後退し、汀線の断崖を下ることにした。装具が邪まになるので、先づ双眼鏡、水筒胴乱等を縄で下にし裸足で一歩一歩下る。眼下には砂岩の大がころがって居り、崖に岩コケが生えている。時々すべって頭の毛がさっとする。漸く地獄を通り、汀線上を南海岸に廻ったが、ここで再び火山岩の絶壁に遭遇した。眼下は青海原であり、完全に進路を阻止された。東方には北小島、南小島が手に取るように見える。魚釣島南岸の断崖上には岩骨の突出■た山があり、近くの崖■はテッポーユリ、キキョウラン、サクラランが見える。海岸にはヒノキ、カタン、ラワン、米松、スギ等の流木が打ち上げられているが、何れもフナクムシが深く侵入して居る。用材としての価値なく薪以外には利用出来ない。しばらく休息の後再び地獄崖を通つ■帰路につく。
 大じゃ生捕
明けて三十一日、島の縦横断を計画し島の最高点を指して早朝出発した。 勿論道はない。自ら路をきりひらいて進まねばならぬ。不利を■ぬ■れな■沿岸の灌木層から喬木層に入る山中には大小幾多の岩が重って居り、しかもコケが生えいるので容易に進めない。昼尚暗い密林がある。ブタノキ、イヌマキ等■■材資源が目につ■■の小さい黒鳩がビロウの葉をばたばたたたいて飛び去る。アツマイマイが時々目につく。羅針盤を取り出して淮む。二時間経過の後漸く南岸の絶壁上に出た。
          【続】