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無人島探訪記(二)

掲載年月日:1950/4/28(金) 昭和25年
メディア:南琉タイムス 2面 種別:記事

原文表記

無人島探訪記(二)
南琉タイムス 昭和二十五年四月二十八日

       高 良 鐡 失
ヒチロウネズミ?が人目をぬすんでちよこちよここう動している
地面が動いているので早速掘り出して見たらジヤコウネズミであつた アヲスジトカゲ オキナワトカゲ?が石垣の穴から出たり入つたりしている 三毛猫(野生化)が鰹を盗みに藪影からのぞいている カモ カモメの■種が時たま訪れて來る このような周圍の狀况からみるとここが無人島中の大都會でありこれ等の自然が吾々の心を慰めてくれる
三 北岸踏査
二十八日午后一時早速調査採集に着手 これからが單獨こう動である 北部海岸に沿うて東北に進む 砂濱が殆んどないので海岸砂地植物は到つて貧弱であり クサトベラ モンバノキ ハマオモト グンバイヒルガオ ハマナタマメ等が僅かに点在している こられの植物はすべてが無人島育ちの趣きを添えて人待ち顔に見える 宿營地の東北方約三百米の地点にはムサシアブミの小群落があり 附近の岩影には人間の白骨が重つている 疎開途中に遭難した人々らしい 無人島で哀れな最後をとげられた人々の爲にしばらく默とうを捧ぐ 沿岸岩地にはガジマル マカテツ イヌマキ リユウキユウガキ等が荒れ狂う風波のために 多くは一米位の高さで曲折し灌木狀に育つている しかもこれが斜面に沿うて圃つている様は寳に面白い 午后二時半沿岸砂地ハマゴクの中に蛇を發見したが取り損ねてしまつた 逃げ場は朽木の根元である 周圍の狀况から判斷してみるとこの穴が樓息所らしい 上陸早々蛇にぶつかるとは余程この島には蛇が多いものと思われた
目前には赤褐色の裸をみせた大岩小岩が重なりころがつて居り地殼の大きな變動の跡がみえる その中央にたつて高い所からみ渡すと約二十町位ある 斷層をみると閃縁岩?を基岩としてその上に第三紀砂岩がのつて居り所々に泥板岩を噴き出している 又石炭層が五六糎の厚みではみ出ている〔續〕

現代仮名遣い表記

無人島探訪記(二)
南琉タイムス 昭和二十五年四月二十八日

       高 良 鉄 失
ヒチロウネズミ?が人目をぬすんでちょこちょここう動している。地面が動いているので早速掘り出して見たらジャコウネズミであった。アオスジトカゲ、オキナワトカゲ?が石垣の穴から出たり入ったりしている。 三毛猫(野生化)が鰹を盗みに藪影からのぞいている。カモ、カモメの■種が時たま訪れて来る。このような周囲の状况からみると、ここが無人島中の大都会であり、これ等の自然が吾々の心を慰めてくれる。
三 北岸踏査
二十八日午後一時、早速調査採集に着手。これからが単独こう動である。 北部海岸に沿うて東北に進む。砂浜が殆んどないので海岸砂地植物は到って貧弱であり、クサトベラ、モンバノキ、ハマオモト、グンバイヒルガオ、ハマナタマメ等が僅かに点在している。こられの植物はすべてが無人島育ちの趣きを添えて人待ち顔に見える。宿営地の東北方約三百米の地点にはムサシアブミの小群落があり、附近の岩影には人間の白骨が重っている。疎開途中に遭難した人々らしい。無人島で哀れな最後をとげられた人々の為にしばらく黙とうを捧ぐ。沿岸岩地にはガジュマル、マカテツ イヌマキ、リュウキュウガキ等が荒れ狂う風波のために、多くは一米位の高さで曲折し灌木状に育っている。しかもこれが斜面に沿うて圃っている様は実に面白い。午後二時半、沿岸砂地ハマゴクの中に蛇を発見したが取り損ねてしまった。逃げ場は朽木の根元である。周囲の状况から判断してみるとこの穴が生息所らしい。上陸早々蛇にぶつかるとは余程この島には蛇が多いものと思われた。
目前には赤褐色の裸をみせた大岩小岩が重なりころがって居り、地殼の大きな変動の跡がみえる。その中央にたって高い所からみ渡すと約二十町位ある。断層をみると閃縁岩?を基岩としてその上に第三紀砂岩がのって居り、所々に泥板岩を噴き出している。又石炭層が五、六糎の厚みではみ出ている。
〔続〕