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◎死体引上げ當時の慘狀
原文表記
◎死体引上げ當時の慘狀
連日引續ける搜索隊が死體を引上げる當時の慘狀こう實に目も當られぬ有樣なり、昨日、崎原の崎海岸に於て發見されたる死體幸地良堅は三浦丸の事務員を勤め居りたるものにて那覇には知己及親族もありて一度同人の死體の引上げられたりと聞くや親族關係者は直ちに其塲に走せ行き死骸の周圍を取り卷きて只管暗涙に咽ぶのみなりしが暫くありて漸く氣が附ける如く周章狼狽■體にて棺を注文することになり暫時にして販賣用の棺を求めて死骸を収めたるも棺餘りに小さく更に棺を取り代えることになりて使を差立て其の歸るまで死骸は只岸上に慘憺たる狀の跡を殘こして轉がり居るのみなりき、又昨日正午を報ずる頃字西山川橋邊に引上げられたる二人の婦人の死體は既に二晝夜も經過したる後筋肉剝げ落ち顏面土色に變じ一見人間の死體とも見受けられざる有樣なりき此■二人の死體は暫時引取人なきまゝ路傍に抛棄され居たる有樣は見るも酸鼻の至りなりき
現代仮名遣い表記
◎死体引上げ当時の惨状
連日引続ける捜索隊が死体を引上げる当時の惨状こう実に目も当られぬ有様なり。昨日、崎原の崎海岸に於て発見されたる死体幸地良堅は、三浦丸の事務員を勤め居りたるものにて、那覇には知己及親族もありて、一度同人の死体の引上げられたりと聞くや、親族関係者は直ちに其場に走せ行き、死骸の周囲を取り巻きて、只管暗涙に咽ぶのみなりしが暫くありて、漸く気が附ける如く。周章狼狽■体にて、棺を注文することになり、暫時にして販売用の棺を求めて死骸を収めたるも、棺余りに小さく、更に棺を取り代えることになりて使を差立て、其の帰るまで死骸は只岸上に惨憺たる状の跡を残こして転がり居るのみなりき。又昨日正午を報ずる頃、字西山川橋辺に引上げられたる二人の婦人の死体は既に、二昼夜も経過したる後筋肉剥げ落ち顔面土色に変じ、一見人間の死体とも見受けられざる有様なりき。此■二人の死体は暫時引取人なきまま、路傍に抛棄され居たる有様は見るも酸鼻の至りなりき