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◎水難救済方法の急要

掲載年月日:1910/10/14(金) 明治43年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

◎水難救濟方法の急要
大洋の眞中にある本縣下の位置よりすればドウしても水難救濟會の設立が必要なること今更のことにあらす、本縣下偶之れなき爲めに三浦丸難破に際しても見す〱無殘の最後を遂けしめき、吾人が承知する所によれば名覇區長喜入休氏の如き水難救濟法により指定されたる地の當局なるべしと記憶す、然るも此悲劇の演せらるゝ間際にも手を束ねて坐視するの外なく、沈沒以後の救濟事業も之を施すに術なき有樣にわらずや、吾人が今日迄の實驗によれば死骸搜索隊としては警官の尽力ある外は舩主に■古賀商店及び取扱の木村店員が協力の運動あるのみならずや、古賀及ひ木村の兩店は舩に關係ある筋合として當然努力すべしとするも、此は寧ろ德義上然かするものにして當然の責任者は警察官署と水難救濟の指定官ならざるべからず、然るに此の二機關は果して何を爲しつゝありや、特別なる搜索及び救濟は木村氏と古賀氏と一任し他は警官の奔走するのみ名覇區の當局者は殆と關係なきものゝ■く僅かに死骸の引受を以て能事盡せりとなすものゝ如し救濟事業には何等千■する所なし吾人の甚た歓心する能はざる所なるが若し此の事を以て救護機關なき爲めなりと云ふものあらば、吾人は今後に於て斯の如き無情のことなからしむ爲め、是非共水難救濟の方法設立するの必要ありと信するものなり吾人の充分なる注文をなさしめば水上署の如き今一層の活潑なる運動が望ましきもの也、水上と水難救濟と相待ちて始めて救濟の目的を達し得べきものなればなり、水難救濟の方法は吾人の宿論たる火防の組織と共に併合し之れを行ふにも自から善方法あるべし、取敢へずの問題として吾人之を懸下の有識に諮ると云ふ

現代仮名遣い表記

◎水難救済方法の急要
大洋の真中にある本県下の位置よりすれば、どうしても水難救済会の設立が必要なること、今更のことにあらす。本県下偶之れなき為めに、三浦丸難破に際しても、見すみす無残の最後を遂けしめき。吾人が承知する所によれば、名覇区長喜入休氏の如き、水難救済法により指定されたる地の当局なるべしと記憶す。然るも此悲劇の演せらるる間際にも、手を束ねて坐視するの外なく、沈没以後の救済事業も、之を施すに術なき有様にわらずや、吾人が今日迄の実験によれば、死骸捜索隊としては、警官の尽力ある外は、船主に■古賀商店及び、取扱の木村店員が協力の運動あるのみならずや。古賀及び木村の両店は船に関係ある筋合として、当然努力すべしとするも、此は寧ろ徳義上然かするものにして当然の責任者は警察官署と水難救済の指定官ならざるべからず。然るに此の二機関は果して何を為しつつありや、特別なる捜索及び救済は、木村氏と古賀氏と一任し他は、警官の奔走するのみ名覇区の当局者は殆と関係なきものの■く僅かに死骸の引受を以て能事尽せりとなすものの如し、救済事業には何等千■する所なし。吾人の甚だ感心する能はざる所なるが、若し此の事を以て、救護機関なき為めなりと云うものあらば。吾人は今後に於て、斯の如き無情のことなからしむ為め、是非共水難救済の方法設立するの必要ありと信するものなり。吾人の充分なる注文をなさしめば、水上署の如き今一層の活溌なる運動が望ましきもの也。水上と水難救済と相待ちて、始めて救済の目的を達し得べきものなればなり。水難救済の方法は吾人の宿論たる火防の組織と共に併合し、之を行うにも自から善方法あるべし、取敢えずの問題として、吾人之を県下の有識に諮ると云う。