キーワード検索
島巡り
原文表記
島巡り
天南漁夫
七月二十日は余が宮古滯在中最も特筆すべき日なり然に前回に於て別に記すべき事なしと記したるは手帖に書つけざりし爲なり依て前後を顧みず爰に錄す
七月二十日 城邊村役塲落成式に列席す同約役塲は福里にあり平良より三里半溪水と共に駕籠に乘りて赴く此間地勢は平坦なれども道路惡しき爲捗取らず片道に約三時間を要せり
此日は炎暑酷烈なりしに拘はらず各字の餘興としては若者達が隊を組んで棒踊とかアヤグとか其他種々の手踊等あり見物人堵をなし中々の賑ひなり
去る十八日には八重山行の宮嶋丸入津の日取なりしか其日もには入津せず十九日にも音沙汰なく今二十日はいよ〱と云ふことなりしが二日間ものび〱になりたる爲め多寡を潛つて城邊に赴さたる處何となく氣になり三時頃は辭して歸りたるも平良につくまでには早宮嶋丸は出港しおまけに海城丸までも少し相前後して出港二人共只呆然此日余等適切に電信なき不便を感したり
現代仮名遣い表記
島巡り
天南漁夫
七月二十日は余が宮古滞在中最も特筆すべき日なり。然に前回に於て別に記すべき事なしと記したるは、手帖に書つけざりし為なり依て前後を顧みず爰に録す。
七月二十日 城辺村役場落成式に列席す、同約役場は福里にあり平良より三里半渓水と共に駕籠に乗りて赴く。此間地勢は平坦なれども、道路悪しき為捗取らず、片道に約三時間を要せり。
此日は炎暑酷烈なりしに拘わらず、各字の余興としては若者達が隊を組んで棒踊とかアヤグとか其他種々の手踊等あり。見物人堵をなし中々の賑いなり。
去る十八日には八重山行の宮嶋丸入津の日取なりしか其日もには入津せず、十九日にも音沙汰なく、今二十日はいよいよと云うことなりしが、二日間ものびのびになりたる為め、多寡を潜って城辺に赴さたる処。何となく気になり三時頃は辞して帰りたるも、平良につくまでには早宮嶋丸は出港し、おまけに海城丸までも少し相前後して、出港二人共只呆然。此日余等適切に電信なき不便を感じたり。