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島巡り
原文表記
島巡り
天南漁夫
七月十七日 朝より知人を歷訪す余は八年以前此嶋に遊びたることあり八年後の今日と比較すれば外歡に於ては格別の相違を見ず只雜貸商が殖へたると滊船の出入りが頻繁になりたるとは著しく目につく是れ嶋内の產物が增進し生活の程度が上向したる■証なるべし
此嶋戶數八千五百二十四戶人口四万四千七百三十一人にて四ケ村に分る一を平良と云ひ人口二万余一を下地と云ひ人口七千余一を城邊と云ひ人口九千余一を伊良部と云ひ人口六千余を有す
物產は昔より上布を以て有名なり内地にて薩摩上布を稱するものは盡く此の地に產す其精巧なるものは一反五六十圓に價ひす此產髙年八千乃至九千反近年は又砂糖も產出す本年の如き二万九千余挺の產額に達せり耕作を改良すれば優に十万挺を產すべし此外縣内にては乘馬の產地を以て知らる四十四十一の両■に於て牡馬三百三十七頭を輸出せり農產物の主要となるものは今日の處砂糖と粟の二種とす
余が大攫みの計■を以てするも輸出物產の價格少くとも三十五万圓を下らす經濟の方法宜しきを得ば十年を出ずして縣下第一否全國有數の富郡とする葢し難事にあらざるべし
晩には例に依り溪水を釣出して沖釣りに出づ然れども結果は不漁
現代仮名遣い表記
島巡り
天南漁夫
七月十七日 朝より知人を歴訪す余は、八年以前此嶋に遊びたることあり。八年後の今日と比較すれば外歓に於ては格別の相違を見ず、只雑貸商が殖へたると、汽船の出入りが頻繁になりたるとは著しく目につく。是れ嶋内の産物が増進し生活の程度が上向したる■証なるべし。
此嶋戸数八千五百二十四戸、人口四万四千七百三十一人にて四ケ村に分る一を平良と云い、人口二万余一を下地と云い、人口七千余一を城辺と云い、人口九千余一を伊良部と云い、人口六千余を有す。
物産は昔より上布を以て有名なり。内地にて薩摩上布を称するものは尽く此の地に産す、其精巧なるものは一反五六十円に価いす。此産高年八千乃至九千反近年は又、砂糖も産出す本年の如き、二万九千余挺の産額に達せり。耕作を改良すれば優に十万挺を産すべし。此外県内にては乗馬の産地を以て知らる四十四十一の両■に於て、牡馬三百三十七頭を輸出せり。農産物の主要となるものは今日の処砂糖と粟の二種とす。
余が大攫みの計■を以てするも、輸出物産の価格少くとも三十五万円を下らず、経済の方法宜しきを得ば、十年を出ずして県下第一否全国有数の冨郡とする、蓋し難事にあらざるべし。
晩には例に依り、渓水を釣出して沖釣りに出づ然れども結果は不漁。