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島巡り

掲載年月日:1909/8/24(火) 明治42年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

島巡り
天南漁夫
七月十六日 早朝起きてデツキに出づれは天氣昨日と異なることなく水天一碧余を中心として大なる圓形を畫き其間島影の目をさへぎるものなし蓋し久米嶋沖と過ぎたるならん
台灣より我琉球諸嶋を經て九州に至るの航路一嶋されば一山來り絕て島影を見ざるは只此處あるのみ沿岸航海に馴れたる目には是れ亦一種の奇歡なりされど此奇歡も■か二三時間に過ぎず九時の頃には早くも前方に島影を認め午后一時には漲水港に着す
溪水と共に上陸し■一の支店に休憩しつゝ宿を探す海江田旅館と稱する一族籠かり家は粗末なれども敷物が淸潔なるを取得に此旅館に投す主婦は辻にて腕を鳴らしたる婀娜ものなれば食事も待遇も別に大した申分とてもなし
海の靜なるを見ては例の釣興忽ちこみあげて押ふる能■ず溪水には納凉とそゝのかし夕景より小舟を賃して乘出す塲所が惡しき故か夜半に至るまで糸に障るものさへなく手を空ふして歸る
 正誤 前回十六日とあるは十五日の誤り                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  

現代仮名遣い表記

島巡り
天南漁夫
七月十六日 早朝起きてデッキに出づれは、天気昨日と異なることなく、水天一碧余を中心として大なる円形を画き、其間島影の目をさへぎるものなし、蓋し久米嶋沖と過ぎたるならん。
台湾より我琉球諸嶋を経て九州に至るの、航路一嶋されば一山来り絶て、島影を見ざるは只此処あるのみ。沿岸航海に馴れたる目には是れ亦一種の奇歓なり。されど此奇歓も■か二三時間に過ぎず、九時の頃には早くも前方に島影を認め、午後一時には漲水港に着す。
渓水と共に上陸し、■一の支店に休憩しつつ宿を探す。海江田旅館と称する一族、籠かり家は粗末なれども敷物が清潔なるを取得に、此旅館に投す主婦は辻にて腕を鳴らしたる婀娜ものなれば、食事も待遇も別に大した申分とてもなし。
海の静なるを見ては例の釣興忽ちこみあげて押うる能■ず渓水には、納涼とそそのかし夕景より小舟を賃して乗出す。場所が悪しき故か夜半に至るまで糸に障るものさえなく手を空うして帰る。
 正誤 前回十六日とあるは十五日の誤り