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◎本年縣下の漁業狀况(五)
原文表記
◎本年縣下の漁業狀况(五)
水產品評會開設の記事を賛す
玉城五郞
◎其第一の理由 從來水產博覧會又は水產共進會其他一般博覧會及ひ共進會などに本縣水產物其他器具機械に就き之か審査を爲し其の製品の優劣漁具漁舩の好拙を發表せしこと拾數度に及ぶも本縣當業者にして之を參觀せし者甚だ僅少にして例令出品は多きも多くは形式的て少も感動がないのである成程三十六年より島尻郡重要物產品評會に鱶鰭と鯣の二点を加へられ爾來年々引續き居るも其は局部に於ける殆ど附属物同樣で未だ水產物として當業者も一般人民も着目せさる樣であるそれ故に今縣下を通し茲に水產品評會を開說すれば當業者の參觀多き上に直接其の優劣を競爭するから其感動に於て内地に開かるゝものと実に雲泥の差があろうと思ふ
◎其第二の理由 尙ほ一の大目的大希望があるこれは斯である此品評會開會中に際し水產集談會を開き當局者並に當業者集まりて漁業上の改善發達を講究すれは定めて縣下水產業の發展を期すことが出來ようと思ふ之は近き一例がある本年四月縣廳に於て二三の當業者を集て漁業上の諮尙會を開だことがある此時にこう云ふ問題があつた鰹船に用ふる内地式の帆は船の進行上並に取扱上不便なるが如し之を本縣式則ち帆棧帆に改めては如何と之には或る當業者は全然反對したものもあつたが結局之を試驗することにした所が本部より出席したる仲宗根組合理事は早速之を試驗せしめた所が果して適合であつて船の走り方船の上り方内地式に優ること數歩で今日では同地に於ける十余艘の鰹船は残らす本縣式の帆である糸滿などでは昨年より本縣式に改めてあつた其の改良は敢て本縣計でない他縣でも往々實驗がありて特に長崎邊では大小の和舩皆な帆棧帆を使用している此の如く本縣は慣習上並に海洋の模樣か他縣と大に異なりているから目下改良の初期に當り大に研究すべき問題がある例へは今日縣下に使用している鰹舩は皆な宮崎形であるが之れ本織の
如き潮流激烈風波高き所抦に於て果して適當であるか否やは今に於て講究すべきものと思ふ現に那覇公園地にある濱田造舩所では玆に觀る所ありて己は多年宮崎形の舩を造り慣れしにも拘はらず一の改良舩を造りつゝあるのである前陳の如く實に水產集談會は大に必要があろうと思ふ
◎扨て此の水產品評會開設に付ては吾々の主張以前に■ふに英明にして實業に御熱心なる吾が長官閣下は其の必要を認められて其の設計方法を具体的に立按して見よと岩井水產學校敎諭並に拙者に御内命があつたのであつて吾々は長官閣下の遠大の御眼識に大に感服したのである終に望み尙ほ一言して是非當業者に知らして置きたいのは長官閣下が如何に水產事業に御熱心なるかであるが閣下は先月東京より御歸廳の際鹿兒島より親ら珊瑚網を買入れて之を縣下の海底に試驗しようとして御持歸りになつた目下其の探收者雇入の交渉中である閣下にして此の如しである當業者は宜しく奮勵すべきである(完)
現代仮名遣い表記
◎本年県下の漁業状況(五)
水産品評会開設の記事を讃す
玉城五郎
◎その第一の理由 従来水産博覧会又は水産共進会、その他一般博覧会及び共進会などに、本県水産物その他器具機械に就き之か審査を為し、その製品の優劣漁具漁舩の好拙を発表せしこと、十数度に及ぶも本県当業者にして、これを参観せし者甚だ僅少にして例令出品は多きも、多くは形式的で少しも感動がないのである。成程、三十六年より島尻郡重要物産品評会にフカヒレとスルメの二点を加へられ、それ以来年々引続き居るも、それは局部に於ける殆ど附属物同様で、未だ水産物として当業者も一般人民も着目せさる様である。それ故に今県下を通し、ここに水産品評会を開設すれば、当業者の参観多き上に、直接その優劣を競争するから、その感動に於て内地に開かるるものと実に雲泥の差があろうと思う。
◎その第二の理由 尚お、一の大目的大希望がある。これはこれである。この品評会開会中に際し水産集談会を開き、当局者並に当業者集まりて、漁業上の改善発達を講究すれば定めて県
下水産業の発展を期すことが出来ようと思う。これは近き一例がある。本年四月県庁に於て二三の当業者を集て、漁業上の諮尚会を開たことがある。この時にこう云う問題があつた。鰹
船に用いる内地式の帆は、船の進行上並に取扱上、不便なるが如し。これを本県式則ち帆桟帆に改めてはいかがと。これにはある当業者は、全然反対したものもあったが、結局これを試験することにした。所が本部より出席したる仲宗根組合理事は、早速これを試験せしめた所が果して適合であって、船の走り方、船の上り方、内地式に優ること数歩で、今日では同地に於ける十余艘の鰹船は、残らず本県式の帆である糸満などでは、昨年より本県式に改めてあった。その改良は敢て本県計でない他懸でも往々実験がありて、特に長崎辺では大小の和舩、皆
な帆桟帆を使用している。この如く本県は慣習上並に、海洋の模様が他懸と大に異なりているから、目下改良の初期に当り大に研究すべき問題がある。例へば今日県下に使用している鰹舩は皆な宮崎形であるが、これ本織の如き、潮流激烈風波高き所柄に於て、果して適当であるか否やは、今に於て講究すべきものと思う。現に那覇公園地にある浜田造舩所では、ここに観る所ありて、己は多年宮崎形の舩を造り慣れしにも拘はらず、一の改良舩を造りつつあるのである。前述の如く実に水産集談
会は大に必要があろうと思う。
◎さて、この水産品評会開設に付ては我々の主張以前に■ふに英明にして実業に御熱心なる我が長官閣下は、その必要を認められて、その設計方法を具体的に立案して見よと、岩井水産学校教諭並に拙者に御内命があったのであって、我々は長官閣下の遠大の御眼識に大に感服したのである。終に望み尚お一言
して、ぜひ当業者に知らして置きたいのは長官閣下が如何に水産事業に御熱心なるかであるが、閣下は先月東京より御帰庁の際、鹿児島より親ら珊瑚網を買入れて、これを県下の海底に試験しようとして御持帰りになった。目下、その探収者雇入の交渉中である。閣下にして、この如しである。当業者は宜しく奮励すべきである(完)