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寄書 ●共進會出品物の審査に就て 玉城五郎
原文表記
寄書
●共進會出品物の審査に就て
玉城五郞
第四 信用の位置 各縣より出る審査員は每會殆ど同一人士の來るを以て精品を出す縣は自然と審査員に信用あり採点も高きにあるが如しと雖も本縣產にありては原品の品質大に他縣産と異なるのみならず全品揃にして稀に品質製造上等のものなかりしにあらされとも免に角最初より審査員に信用少きを以て各縣品と共に列に加へるが如く又加へさるが如くして遂に沖縄は沖縄として審査するとて詳細の採点は凡て審査官に任するをとせり今不信用の一例を擧くれは糸滿村民より水鯣(本縣の白鳥賊)の出品あり製造も甚だ良かりしも該品に沖縄產にあらずとの疑ひ起りたり然れとも予は該品製造するとを現に見たる故百方之を釋明し遂に二日間に於て審査官より沖縄產に相違なしとの報告ありたるか如きことあり
第五 受賞者 以上述ふる所より之を見れば、本縣出品物にして受賞物に高等賞即ち三等以上の賞を受る見込なきは言までもなけれども今會那覇區古賀辰四郎氏の出品に係る鱶鰭の二等賞を受けしは実に本縣の名譽とする所なり。
思ふに氏は多年本縣に在りて、水產商の傍ら斯業の発達を計り、又博覽會共進會等にも每度熱心に出品せし功勞と履歷を有するの結果、此れの如く名譽ある賞を受けたるならん。
結論 予は茲に結論として少しく將來の希望を述へんとす抑も共進會は其文字の示す如く共に製產を進むるの意なれども之を分析すれば一方には精品を出して其地商業品の信用を高め俚の一方には他縣に於ける優等品を模倣せしむるにあり故に今後共進會に精品を出し以て吾商製品の信用を博せんと欲は本縣に於にても他縣と同しく豫め出品物の準備會の如きものを設けて本縣一定の精品を出さしめんこと望む又第二の目的を達する爲め今會も各郡より出品總代として十名の諸紳士出熊ありしか此等諸賢は果して此の視察を遂け來りしや如何
終りに臨み鑑定の項目に基き出品物製法の要点を述へん
品質 は捕獲の時期に因る原料の良否を鑑定するにあれは可成新鮮にして原料の良好なるものを撰ふべし形状は截割、熨伸、整■に因る内外需用の適否を鑑定する故生の時截割を爲し乾燥後は决して再截すへからず殊に改良截の方針を取るへし
色澤 は洗滌の方法を原料の新陳に由る色澤を見る故淡水を用いて充分之を洗ひ决して鹽水を用ふへからす
結束 鯣の如き結束を要するものは可成大小■別して同大のものを把束すべし
乾燥 の目的は貯藏にあるを以て出來得丈乾燥充分ならしむへし以上
現代仮名遣い表記
寄書
●共進会出品物の審査に就て
玉城五郎
第四 信用の位置 各県より出る審査員は毎会殆ど同一人士の来るを以て、精品を出す県は自然と審査員に信用あり採点も高きにあるが如しと雖も、本県産にありては原品の品質大に他県産と異なるのみならず、全品揃にして稀に品質製造上等のものなかりしにあらざれども、免に角最初より審査員に信用少きを以て各県品と共に列に加へるが如く、又加へざるが如くして遂に沖縄は沖縄として審査するとて詳細の採点は凡て審査官に任することとせり。今不信用の一例を擧くれば糸満村民より水鯣(本県の白鳥賊)の出品あり、製造も甚だ良かりしも該品に沖縄産にあらずとの疑ひ起りたり。然れども予は該品製造するを現に見たる故、百方之を釈明し遂に二日間に於て審査官より沖縄産に相違なしとの報告ありたるが如きことあり。
第五 受賞者 以上述うる所より之を見れば、本県出品物にして受賞物に高等賞即ち三等以上の賞を受る見込なきは言うまでもなけれども、今会那覇区古賀辰四郎氏の出品に係る鱶鰭の二等賞を受けしは実に本県の名誉とする所なり。
思ふに氏は多年本県に在りて、水産商の傍ら斯業の発達を計り、又博覧会共進会等にも毎度熱心に出品せし功労と履歴を有するの結果、此れの如く名誉ある賞を受けたるならん。
結論 予は茲に結論として少しく将来の希望を述べんとす。抑も共進会は其文字の示す如く共に製産を進むるの意なれども、之を分析すれば一方には特品を出して其地商業品の信用を高め、俚の一方には他県に於ける優等品を模倣せしむるにあり。故に今後、共進会に精品を出し以て吾商製品の信用を博せんと欲ば、本県に於にても他県と同じく予め出品物の準備会の如きものを設けて、本県一定の精品を出さしめんこと望む。又第二の目的を達する為め、今会も各郡より出品総代として十名の諸紳士出熊ありしが、此等諸賢は果して此の視察を遂け来りしや如何。
終りに臨み鑑定の項目に基き出品物製法の要点を述べん。
品質 は捕獲の特態に因る原料の良否を鑑定するにあれば可成新鮮にして原料の良好なるものを選ふべし。形状は截割、熨伸、整■に因る内外需要の適否を鑑定する故、生の生の時截割を為し乾燥後は決して再截すへからず、殊に改良截の方針を取るべし
色澤 は洗滌の方法を原料の新陳に由る色澤を見る故、淡水を用いて充分之を洗ひ、決して塩水を用うべからず
結束 鯣の如き結束を要するものは可成大小■別して同大のものを把束すべし
乾燥 の目的は貯蔵にあるを以て出来るだけ乾燥充分ならしむべし、以上