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共進會出品物の審査に就て 玉城五郞

掲載年月日:1901/4/5(金) 明治34年
メディア:琉球新報社 2面 種別:記事

原文表記

共進會出品物の審査に就て
玉城五郞
予回より不經驗の者なれとも今般熊本に開設の第十一回九州沖繩八縣聯合共進會水產部審査員の命を始めて辱うせしは實に予の幸榮とする所なり予ハ予が担任外の出品物に付ても多少取調べ且つハ感せしこともあれとも其ハ担任の審査員あるなれハ予ハ只た予が担任の水產物に■き■か報道を試み以て將來本縣の出品人及ひ關係當局者の注意を促さんとす乞ふ一見の勞を愼むなくんは幸甚
第一  出品物の種類及ひ点數 出品物は鰑、鱶鰭、鰹節の三種にして其總点數千二百六十五之を縣別すれハ左表の如く
縣別種類 福岡  大分   宮崎   長崎   鹿兒島   熊本   佐賀  沖繩
鰑    二九  二六  六四  二三七  九二   五九   二二  一三
鱶鰭  二三  一九  三七   三三   三六   三七    ―    四
鰹節   ―  一一  八六   五三   一一〇   九〇    一    ―
表中に現いるゝ如く鰹節の出品なき所は獨り沖繩に限らされとも予は甚だ苦痛を感したりき仰も鰹魚たる敢て本縣に產せさるにあらす却て勝るありて劣るなきが特に慶良間列島久米島等に於ては該魚の來遊甚た多く年々鹿兒島縣人の出家漁獲に來るものありて巨額の節をもたらし歸れり予爰に見る所ありて今度出張の途次鹿兒島縣下枕崎に於て漁船漁具の代價並に漁夫の給料等一切の取調をなせしを以て直に此漁獲を試まんと欲するも予ハ他に目的を固めし一の漁業の計画ありて既に此度器械及ひ漁夫も連來り居れハ他日に譲るより外なし聞く所に由れは慶良間糸滿の漁民組合を以て既に該漁に着手せりと彼等にして適當の技術者あれは必ず好結果を得るは予の疑いさる所なり
第二  出品人及ひ出品物の撰定法 出品人を撰定するに本縣に於ては農士商の別なく何人たりとも差當次第村役場なとにて之を命し共進會毎に其人を異にし出品人の定らさるか爲め製造に無經驗なるのみならす審査の方針等に付きても全く盲目なれは出品に精品出てさるも無理にあらさるなり又漁業者製造家とて進て出品するの念なく偶々村役塲などより命ずれば止を得ず出品する有樣にして他縣の出品人とは雲泥の觀あるなり又他縣ハ町村役塲などにて出品人を撰定するも可成く其出品履歴あるものを損ねるが如し盖し履歴ハ大に受賞に関係あれはなり
又出品物の撰定に付ても本縣に於ては出品人兼て其用意をなさす出品の時期到達すれは其筯の督促に會ひうろたへて自家有合の品か若くハ市場にて販売の粗品を出すを常とし郡區間切村役塲とて亦其適否を顧みさるが如しと難も他縣出品人は兼々其覺悟を以て出來得丈精品を出さんとし再三再五其製品を換へるとあり加之町村役塲い豫め出品物の審査會を催し荷も出品に適せさるものは之を再製せしむる等實に注意周到なり
第三 審査方法 審査之を鑑定と調査の二項に分ち鑑定ハ審査官及ひ審査員之を為し調査ハ審査長、審査官の掌るところとす面して鑑定ハ品質、形狀、色澤、香味、結束、整理、乾燥等を主に審査す今審査の順序を概述すれハ先つ最初に審査に附するものと然らさるもの所謂及第と落第を審査し其及第せしものは一品毎に附点し然る後各縣の附点品を集めて■■を付し比較審査なるものを爲すものとす此時に當りてハ實に議論百出する所なり之を終れは即ち審査長などハ調査とて出品人の履歴功績進歩等其他種々の方面より調査を爲始めて授賞の等級を附するものとす(未完)

現代仮名遣い表記

共進会出品物の審査に就て
玉城五郎
予回より不経験の者なれども、今般熊本に開設の第十一回九州沖縄八県連合共進会水産部審査員の命を始めて辱うせしは、実に予の幸栄とする所あり。予は予が担任外の出品物に付ても多少取調べ且つは感せしこともあれども、其は担任の審査員あるなれば、予は只た予が担任の水産物に■き■か報道を試み以て、将来本県の出品人及び関係当局者の注意を促さんとす乞う一見の労を惜むなくんば幸甚。
第一  出品物の種類及び点数 出品物は鰑、鱶鰭、鰹節の三種にして其総点数千二百六十五之を県別すれば左表の如く
県別種類 福岡  大分  宮崎   長崎  鹿児島  熊本  佐賀  沖縄
鰑     二九  二六  六四  二三七    九二  五九  二二  一三
鱶鰭    二三  一九  三七   三三    三六  三七        四
鰹節   ―  一一  八六   五三  一一〇  九〇   一
表中に現はるる如く、鰹節の出品なき所は独り吾沖縄に限らざれるとも予は甚だ苦痛を感じたりき。抑も鰹魚たる敢て本県に産せたるにあらず。却て勝るありて劣るなきが、特に慶良間列島久米島等に於ては該魚の来遊甚だ多く、年々鹿児島県人の出家漁獲に来るものありて巨額の節をもたらし帰れり。予爰に見る所ありて、今度出張の途次鹿児島県下枕崎に於て、漁船漁具の代価並に漁夫の給料等一切の取調をなせしを以て、直に此漁獲を試まんと欲するも予は他に目的を固めし一の漁業の計画ありて、既に此度器械及び漁夫も連来り居れば他日に譲るより外なし。聞く所に由れば慶良間糸満の漁民組合を以て既に該漁に着手せりと、彼等にして適当の技術者あれば必ず好結果を得るは予の疑はざる所なり。
第二 出品人及び出品物の選定法 出品人を選定するに、本県に於ては農士商の別なく何人たりとも差当次第、村役場などにて之を命じ共進会毎に其人を異にし出品人の定らさるが為、製造に無経験なるのみならず審査の方針等に付きても全く盲目なれば、出品に精品の出でざるも無理にあらざるなり。又漁業者製造家とて進で出品するの念なく、偶々村役場などより命ずれば止を得ず出品する有様にて他県の出品人とは雲泥の観あるなり。又他県は町村役場などにて出品人を選定するも可成く、其出品履歴あるものを扣えるが如し。盖し履歴は大に受賞に関係あれはなり。
 又、出品物選定に付ても本県に於ては、出品人兼て其用意をなさず出品の時期到達すれば其筯の督促に会い、うろたえて自家有合の品か、若くは市場にて販売の粗品を出すを常とし、郡区間切村役場とて亦其適否を顧みさるが如しと雖も、他県出品人は兼々其覚悟を以て出来得丈精品を出さんとし、再三再五其製品を換えるとあり加之町村役場は、予め出品物の審査会を催し荷も出品に適せざるものは之を再製せしむる等、実に注意周到なり。
第三 審査方法 審査之を鑑定と調査の二項に分ち、鑑定は審査官及ひ審査員之を為し、調査は審査長、審査官の掌るところとす。而して鑑定は品質、形状、色沢、香味、結束、整理、乾燥等を主に審査す。今審査の順序を概述すれば先づ最初に審査に附するものと然らざるもの、所謂及第と落第を審査し其及第せしものは一品毎に附点し、然る後各県の附点品を集めて■■を付し、比較審査なるものを為すものとす。此時に当りては実に議論百出する所なり。之を終れば、即ち審査長などは調査とて出品人の履歴功績進歩等其他種々の方面より調査を為し始めて、授賞の等級を附するものとす。(未完)