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●訪問録(南淸貿易について)

掲載年月日:1900/7/21(土) 明治33年
メディア:琉球新報社 2面 種別:記事

原文表記

●訪問録(南淸貿易に就て)
◎肥後孫左衛門
南淸航路の保護の件に就ては知事も熱心に尽力せらるゝ事なれは其成功の暁には随分見込ありて開港塲を支持することは容易なりと信するなり直接の航路だに開かるゝに就ては先つ彼地より輸入すへき物品の重なるものには茶の如きアーラーチエーの如き反布あり輸出すへき物品には鱶のヒレの如き海産物は大に望あり而して實際貿易を開始するに至らは彼我の需用供給の事情を察知して輸出すへき物品輸入すへき物品は随分多かるへしと想像するなり椎茸は彼地に於て需要頗る多く山原地方に於て製造の見込あり其他鹿兒島の海産物又は椎茸の如きも當地より輸出する事を得べし航路開通せは五万圓の輸出入貨物を見ること容易なるへし
◎大坪岩次郎
南淸貿易の有望なることは既に調査會員の精細なる取調と知事か渡淸の上實地視察の結果大に見らるゝ所ありて直接航路を開始するの必要を認められ夫々御尽力ありし次第にて敢て我々の喋々を要せさる所なり然れとも航路の保護にして議會の協賛を得る能はす五万圓の保護金なしとすれは個人として五万圓以外の大金を抛つて航路を開始すると云ふ事は到底望むへからずと思考す
◎中馬辰次郎
南淸貿易の事に就ては夫れ夫れ調査を遂けられ又た實地に視察せらるゝ所あり古賀辰四郎氏の如きも知事に随行して南清へ渡航して視察し海産物の販價を試みしに一人の之を買ふものなく大に損をしたりとの事なり是れ言語不通双方の事情通せさりしに因ると雖とも亦た以て商賣の順序立たず彼の爲めに信認せられさりしに因れりと云ふ故に彼れと貿易を爲し商賣の利益を収めんと欲せは先つ支店を彼地に設けて彼地の事情に通すると共に永久取引の根據を定て以て彼の信用を買はさるへからず南淸貿易の有望なる事は往昔渡唐舩時代に莫大の利益ありしに依りても推測し得へきなり但し彼と貿易を爲すに就ては航路を開通せさるへからきさる事は勿論の次第にして航路の保護さへあれは双方の貿易行はれて開港塲を支持すること決して難き事にはあらさるなり
●本縣の警視
首里警察署長橋口軍氏か本縣警視に任せられたることは前號の東電にて報道したるが如くなるか辭令到着の上は同氏は當然那覇警察署に轉ずへし猶ほ警察部にも一人の警視を置くの議あるか果して警視を置くことなれは他より來るならんと云ふ
●日比書記官の一行
日比本縣書記官並に黑川四課長川上属は昨日入港の釜山丸より歸廳せり
●徴兵檢査員の一行
兼て徴兵檢査の爲め先島へ出張中の司令部副官の一行及び本縣属高田初次郎氏は昨日入港の釜山丸より歸廳せり
●川上島尻郡書記
は學校分離の件に就き大里間切役塲へ出張中の處今明日の中歸廳の筈
●除服出仕
眞和志間切収入役赤嶺仁王氏は目下忌服中の處事務多望に就き除服出仕を命せられたり
●電信發着數の増加
去る六月中那覇電信局の電信發着數は三萬三百四十七にして昨年六月中の發着數より増加せること七千八百十八なりと云ふ
●大島與論間の電信不通
大島郡久仁屋より與論島へ架設せる電信線は暴風の爲めに切断し目下不通となり居る由
●仲西技手の歸局
那覇郵便電信局技手仲西金吾氏は大島地方へ出張中の處一昨日入港の球陽丸便より歸局せり

現代仮名遣い表記

●訪問録(南清貿易に就て)
◎肥後孫左衛門
南清航路の保護の件に就ては知事も熱心に尽力せらるる事なれば、その成功の暁には随分見込ありて開港場を支持することは容易なりと信ずるなり。直接の航路だに開かるるに就ては、先づ彼地より輸入すべき物品の重なるものには茶の如きアーラーチエーの如き反布あり、輸出すべき物品にはフカのヒレの如き海産物は大に望あり。しかし実際貿易を開始するに至らば、彼我の需用供給の事情を察知して、輸出すべき物品輸入すべき物品は随分多かるべしと想像するなり。椎茸は彼地に於て需要すこぶる多く山原地方に於て製造の見込あり。その他、鹿児島の海産物又は椎茸の如きも当地より輸出する事を得べし。航路開通せば五万円の輸出入貨物を見ること容易なるべし。
◎大坪岩次郎
南清貿易の有望なることは既に調査会員の精細なる取調と、知事が渡清の上実地視察の結果大に見らるる所ありて、直接航路を開始するの必要を認められ、それぞれ御尽力ありし次第にて敢て我々の喋々を要せざる所なり。然れども航路の保護にして議会の協賛を得られず五万円の保護金なしとすれば、個人として五万円以外の大金をなげうって航路を開始すると云う事は到底望むべからずと思考す。
◎中馬辰次郎
南清貿易の事に就てはそれぞれ調査を遂げられ、又た実地に視察せられる所あり。古賀辰四郎氏の如きも、知事に随行して南清へ渡航して視察し海産物の販売を試みしに、一人の之を買うものなく大に損をしたりとの事なり。これ言語不通双方の事情通ぜざりしに因るといえども、また以て商売の順序立たず。彼の為めに信認せられざりしに因れりと云う。故に彼れと貿易を為し商売の利益を収めんと欲せば、先づ支店を彼地に設けて彼地の事情に通ずると共に、永久取引の根拠を定て以て彼の信用を買わざるべからず。南清貿易の有望なる事は、往昔渡唐船時代に莫大の利益ありしに依りても推測し得べきなり。但し彼と貿易を為すに就ては航路を開通せざるべからきざる事は勿論の次第にして、航路の保護さえあれば双方の貿易行われて開港場を支持すること決して難き事にはあらざるなり。
●本県の警視
首里警察署長橋口軍氏が本県警視に任ぜられたることは前号の東電にて報道したるが如くなるが、辞令到着の上は同氏は当然那覇警察署に転ずべし。なお警察部にも一人の警視を置くの議あるが、果して警視を置くことなれば他より来るならんと云う。
●日比書記官の一行
日比本県書記官並に黒川四課長川上属は、昨日入港の釜山丸より帰庁せり。
●徴兵検査員の一行
兼て徴兵検査の為め先島へ出張中の司令部副官の一行及び本県属高田初次郎氏は、昨日入港の釜山丸より帰庁せり。
●川上島尻郡書記
は学校分離の件に就き大里間切役場へ出張中の処、今明日の中帰庁の筈。
●除服出仕
真和志間切収入役赤嶺仁王氏は目下忌服中の処、事務多望に就き除服出仕を命ぜられたり。
●電信発着数の増加
去る六月中那覇電信局の電信発着数は三万三百四十七にして、昨年六月中の発着数より増加せること七千八百十八なりと云う。
●大島与論間の電信不通
大島郡久仁屋より与論島へ架設せる電信線は、暴風の為めに切断し目下不通となり居る由。
●仲西技手の帰局
那覇郵便電信局技手仲西金吾氏は大島地方へ出張中の処、一昨日入港の球陽丸便より帰局せり。