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海外交易調査會(續)
原文表記
海外交易調査會(續)
茶
一 茶の種類 本縣に志那より輸入する茶の重なる種類は清明茶、花香茶、半山茶の三種にして其内尤多く消費するは清明茶とす其他工夫茶小種茶等あれとも其額甚た僅小なり
二 產地及產額 右に掲けたる茶の產地ハ福州にして又福州は支那に於ても著明の產地なり其他三砂灣地方も亦多し
三 集散地 本縣に輸入する支那茶の集散地は大坂にして支那商人に依りて大坂に輸入せられ本縣茶商は之を買人輸入す
支那商人とは福州人にして茶を專業とするにあらす茶商を兼業し又ハ雜貨商を營むものなり此等の商人は大坂に居留し本縣茶商に販賣す本縣茶商にして支那商人と直接取引をなすものは凡そ十軒あり其重なるものを擧くれれは丸一店丸三店嘉數店比嘉店平尾店等ふして又廣運株式會社大阪事務所へ依賴し買入るヽものも多しと云ふ
福州に於て茶商を營むもの多しと雖とも大坂へ福州より輸出する茶商は僅かに二三名に過きす又外國人にして福州に於て擇り子數十人を使役し盛に製茶に從事するものあり支那より輸出の際支那人は厘金稅海關稅又日本に於て輸入稅を携ふ然れとも本邦人にして支那より輸出するときは海關稅と輸入稅のみして厘金稅を揃はず其稅金の割合ハ詳かならされとも厘金稅ハ海關稅の十分の一海關稅は茶百斤に付凡す日本銀貨三圓五十錢本邦輸入稅毎斤六錢貳厘なり
四 運搬の方法附荷造 福州より輸出する茶は総て外國船に投積し一度香港に至り而して上海長崎を經て大坂に到達す
荷造ハ斤量に差異あれども其方法ハ同一にして甚だ不完全なる者なり淸明茶は壹個四十斤入包二個合せ八十斤を壹函とす其入器は杉の薄き粗造なる板を以て造り其内部ハ錫の薄板にて張り又函の外部ハ竹にて製したる本邦の莚の如きものを以て包み其上を數ヶ所縄を以て縛ず
半山茶は四半斤又ハ半斤つヽ包みたるもの三十斤入包み三個を壹函とし花香茶は四半斤包半斤包又壹斤包八十八斤入を壹函とす而して右一函志那より大坂迄の運搬費ハ詳かならされとも大坂より那覇迄は一函平均凡そ七十五錢 (未完)
現代仮名遣い表記
海外交易調査会(続)
茶
一 茶の種類 本県に志那より輸入する茶の重なる種類は、清明茶、花香茶、半山茶の三種にして、其内尤多く消費するは清明茶とす。其他工夫小茶等あれとも、其額甚た僅小なり。
二 産地及産額 右に掲げたる茶の産地は、福州にして又福州は、支那に於ても著明の産地なり。其他三砂湾地方も亦多し。
三 集散地 本県に輸入する支那茶の集散地は、大坂にして支那商人に依りて、大坂に輸入せられ、本県茶商は之を買人輸入す。
支那商人とは福州人にして、茶を専業とするにあらす。茶商を兼業し又は、雑貨商を営むものなり。此等の商人は大坂に居留し、本県茶商に販売す。本県茶商にして支那商人と、直接取引をなすものは凡そ十軒あり。其重なるものを挙くれれば、丸一店、丸三店、嘉数店、比嘉店、平尾店等にして又、広運株式会社大阪事務所へ依頼し買入るるものも多しと云う。
福州に於て茶商を営むもの多しと雖とも、大坂へ福州より輸出する茶商は僅かに二三名に過きず。又外国人にして福州に於て択り子数十人を使役し盛に、製茶に従事するものあり。支那より輸出の際支那人は厘金税海関税、又日本に於て輸入税を携ふ然れとも、本邦人にして、支那より輸出するときは、海関税と輸入税のみして厘金税を揃はず。其税金の割合い詳かならされとも厘金税は海関税の十分の一。海関税は茶百斤に付、凡そ日本銀貨三円五十銭本邦輸入税。毎斤六銭弐厘なり。
四 運搬の方法附荷造 福州より輸出する茶は総て、外国船に投積し、一度香港に至り、而して上海長崎を経て大坂に到達す。
荷造は斤量に差異あれども、其方法は同一にして、甚だ不完全なる者なり。清明茶は壱個四十斤、入包二個合せ八十斤を壱函とす。其入器は杉の薄き粗造なる板を以て造り、其内部は錫の薄板にて張り、又函の外部は竹にて製したる本邦の莚の如きものを以て、包み其上を数ヶ所縄を以て縛ず。
半山茶は四半斤、又は半斤つつ包みたるもの、三十斤入包み三個を壱函とし。花香茶は四半斤、包半斤、包又壱斤、包八十八斤入を壱函とす。而して、右一函志那より大坂迄の運搬費は、詳かならされとも大坂より那覇迄は一箱平均凡そ七十五銭。 (未完)