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雜 報 ●渡淸道中日記(續)
原文表記
雜 報
●渡淸道中日記 (續)
雜觀
當港には税關あり臺灣銀行の出張所があり商船會社の支店あり英國領事舘ありドクラス會社の支店あり其他二三外國人の住家ありて開港塲の体裁をなす海岸一帶の重要地は英國人の所有に属せり是こと臺灣占領の歳其権利を我か政府に向て主張したるものの由にて其証とする所は單に英國領事舘に保存せる圖面なりと云ふ或は不時の利を得たるものなるべし又支那人にして英國籍を有する者數多あり英國領事舘ハ特に保護民の態を以て彼等を遇し特別の支那人戸籍簿に登記するものにして支那人は英國領事の勢力を■よれるなり或ハ云ふ臺灣の施政ハ一体に外國人に氣益するの風ありて日本人よりも寧ろ事が通り易きの觀ありと眞偽は保し難けれとも然かる事實も亦た無きにしもあらざるへし
廿一日雨 行李を収めて十二時頃舞鶴丸に乗り午后一時抜錨す風強く波荒れて船の動搖甚しくしはしは室の戶を洗ふ音あり然れども終日終夜安臥して幸に舩暈を感せず
廿二日晴 朝大陸を見てより波やヽ穏かにして暉々たる日光心地よく午前十時比厦門灣に入る灣内無數の島嶼碁布して砲臺または鋒火臺の設けあるを見る進むこと十哩許にして市街の相對するを認む北は厦門島に志て南は皷浪嶼(コロンス)と稱し両島の間恰も海峽■の狀をなすの處即ち厦門港なり船ハ直に港内に向はす皷浪嶼の西南方を迂行して泊す云ふ潮の干滿によりて出入を異にすと淡水を去る西行凡そ百八十哩なり
支那の海西北あるヽ此比の
波路をこえてわれは來にけり
現代仮名遣い表記
雑 報
●渡清道中日記 (続)
雑感
当港には、税関あり台湾銀行の出張所があり商船会社の支店あり英国領事館ありドクラス会社の支店あり其他二三外国人の住家ありて、開港場の体裁をなす、海岸一帯の重要地は英国人の所有に属せり。是こと台湾占領の歳その権利を我が政府に向て主張したるものの由にて、その証とする所は単に英国領事館に保存せる図面なりと云う、或は不時の利を得たるものなるべし。又、支那人にして英国籍を有する者数多あり。英国領事館は特に保護民の態を以て、彼等を遇し特別の支那人戸籍簿に登記するものにして、支那人は英国領事の勢力をたよれるなり。或は云う、台湾の施政は一体に外国人に気益するの風ありて、日本人よりも寧ろ事が通り易きの観ありと。真偽は保し難けれども然かる事実もまた無きにしもあらざるべし。
二十一日雨 行李を収めて十二時頃舞鶴丸に乗り、午後一時抜錨す。風強く波荒れて船の動揺甚しく、しばしば室の戸を洗ふ音あり。然れども終日終夜安臥して幸に船酔を感せず。
二十二日晴 朝大陸を見てより波やや穏かにして、暉々たる日光心地よく午前十時比厦門湾に入る。湾内無数の島嶼碁布して、砲台または鋒火台の設けあるを見る。進むこと十哩許にして市街の相対するを認む。北は厦門島にして南は皷浪嶼(コロンス)と称し、両島の間あたかも海峡■の状をなすの処。即ち厦門港なり船は直に港内に向はず皷浪嶼の西南方を迂行して泊す云う潮の干満によりて出入を異にすと淡水を去る西行凡そ百八十哩なり
支那の海西北あるヽ此比の
波路をこえてわれは来にけり