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●海外貿易調査に關する協議會
原文表記
●海外貿易調査に關する協議會
今回那覇港か他の二十一港と共に新たに開港塲に指定せられ爾后海外諸國と貿易の自由を與へられたるに就ては既に官民相一致して祝賀會を催せるあり吾輩亦本紙上に於て屡々説述して大方の注意を促したる如く開港の榮譽と利益を維持するに就ては大いに講究を要する事なるか此事に就き縣廳に於ては本縣實業家の重なる人々を招き協議會を開きたる由は過日の紙上に報道したる所にして縣廳よりは奈良原知事始め椿書記官岡田參事官等臨席し協議をなしたるか協議に遷るの前に奈良原知事は起て一同に挨拶して曰く本日諸君の御來臨を煩はしたるは今般那覇港か開港塲となりたるに付其維持法に關し御協議申上度存し御來會を願ひましたる處此炎天にも拘らず皆樣御出遣されましたるは實に感謝の至りで御座います抑も那覇港貿易の事は小官に於ても廿五年赴任の時より深く希望して居りましたる處今般幸に開港塲となりたるは誠に滿足の至りで御座います尤も開港塲の儀も命令前て御坐りますれは二ヶ年に五万圓の輸出入品有無の問題等は深く考究せねはならん事柄と存しまするか最早や開港塲と成たる今日は如何にもして當港を永遠に維持するの方法を研究するの外は無ひと存しまず夫故今日諸君の御來臨を煩わしたる次第を伺ひます筈で御座りますか其用意も御座りませず併し明治廿五年直輸港の件に付奉呈致したる上申書か御坐りますから之を朗読致し且つ右へ添付致したる取調書を御参考迄に御覧に入れますゆへ何卒各位の御意見も充分に御示しあらん事を希望致します云々と述へ椿書記官は「當地海外貿易の發達は本縣人と寄留人とを問はず又直接に貿易業に從事すると否とを論せず均しく其利益を蒙むるべき事を疑はす随て本縣を利し國家を利するは論を須たず故に縣廳は斯業の隆盛に至らん事を希ふて止まざるなり又た知事には祝賀會に於て演説せられたる如く事固より未定に屬すれとも遠からす淸國福州に出張の擧あらんとするやに察せらる抑も福州は土壌接近し交通往來久しからずとせず自今海外貿易を開始せんと欲せは先つ手を此の地に下すべきは勢の最も利便とする所なるへし恰も好し此際知事の出張あり此の好機會を空しくせず彼の地の商慣習を始め貿易品の種數等諸般の事項の調査を請はヽ其利益決して尠からざるべし依て主として右の趣旨及ひ調査事項評定の手續等に付御恊議を謂はんか爲め本日諸君の御會同を煩はしたる次第なり願くは充分御意見を御陳述あらん事を云々と述べ了りて愈々恊議に遷り協議の末遂に毎月々木曜の両日午后七時より十時迄縣廳内に協議會を開く事と定め又た調査委員として縣廳よりは十名、民間よりは尚順、護得久朝惟、嘉數詠顯、肥後孫左衛門、普久里宗業、大峰桝吉、平尾喜八、比嘉次郎、渡久山朝恭、伊是名朝睦、永江徳志、中馬辰次郎、高嶺朝敎、大坪岩次郎、古賀辰四郎、名護紹孔、津嘉山珍章、小嶺幸之の十八名を撰定し調査會長には椿書記官、副會長には岡田參事官に嘱托せられ又調査事項を議定し並に調査担當をは各委員より撰定したるか調査担當人及ひ調査事項は大畧左の如し(以下次號)
現代仮名遣い表記
●海外貿易調査に関する協議会
今回、那覇港が他の二十一港と共に新たに開港場に指定せられ、その後海外諸国と貿易の自由を与えられたるに就ては既に、官民相一致して祝賀会を催せるあり。吾輩また本紙上に於てしばしば説述して大方の注意を促したる如く、開港の栄誉と利益を維持するに就ては大いに講究を要する事なるか、此事に就き県庁に於ては本県実業家の重なる人々を招き協議会を開きたる由は、過日の紙上に報道したる所にして、県庁よりは奈良原知事始め椿書記官、岡田参事官等臨席し協議をなしたるが、恊議移るの前に奈良原知事は起て一同に挨拶して曰く、本日諸君の御来臨を煩わしたるは、今般那覇港が開港場となりたるに付、その維持法に関し御協議申上度存し御来会を願ひましたる処、この炎天にも拘らず皆様御出遣されましたるは実に感謝の至りで御座います。抑も那覇港貿易の事は、小官に於ても二十五年赴任の時より深く希望して居りましたる処、今般幸に開港場となりたるは誠に満足の至りで御座います。もっとも開港場の儀も命令前で御坐りますれば、二ヶ年に五万円の輸出入品有無の問題等は深く考究せねばならん事柄と存じまするが、最早や開港場と成たる今日は、如何にもして当港を永遠に維持するの方法を研究するの外は無いと存します。それゆえ今日諸君の御来臨を煩わしたる次第を伺います筈で御座りますが、その用意も御座りませず、しかし明治二十五年、直輸港の件に付奉呈致したる上申書か御座りますから之を朗読致し、且つ右へ添付致したる取調書を御参考までに御覧に入れますゆえ、何卒各位の御意見も充分に御示しあらん事を希望致します云々と述べ、椿書記官は「当地海外貿易の発達は、本県人と寄留人とを問はず、又直接に貿易業に従事すると否とを論せず、均しくその利益を蒙むるべき事を疑はず。したがって本県を利し国家を利するは論を須たず。故に県庁は斯業の隆盛に至らん事を希うて止まざるなり。また知事には祝賀会に於て演説せられたる如く事もとより未定に属すれども遠からず。清国福州に出張の挙あらんとするやに察せらる。そもそも福州は土壌接近し交通往来久しからずとせず今後、海外貿易を開始せんと欲せば先づ手を此の地に下すべきは勢の最も利便とする所なるべし。あたかも好しこの際知事の出張あり、此の好機会を空しくせず彼の地の商慣習を始め貿易品の種数等諸般の事項の調査を請わば、其利益決して少なからざるべし。依て主として右の趣旨及び調査事項評定の手続等に付、御協議を謂わんか為め、本日諸君の御会同を煩はしたる次第なり。願わくは充分御意見を御陳述あらん事を云々と述べ、了りて愈々恊議に移り、協議の末遂に毎月々木曜の両日午後七時より十時迄県庁内に協議会を開く事と定め、又た調査委員として県庁よりは十名、民間よりは尚順、護得久朝惟、嘉数詠顕、肥後孫左衛門、普久里宗業、大峰桝吉、平尾喜八、比嘉次郎、渡久山朝恭、伊是名朝睦、永江徳志、中馬辰次郎、高嶺朝教、大坪岩次郎、古賀辰四郎、名護紹孔、津嘉山珍章、小嶺幸之の十八名を撰定し、調査会長には椿書記官、副会長には岡田参事官に嘱托せられ又調査事項を議定し、並に調査担当をば各委員より選定したるが調査担当人及び調査事項は大略左の如し(以下次号)