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●寄留商人案内(一)
原文表記
●寄留商人案内 (一)
本懸の商業界を篤と觀察すれは内地商人並に沖繩商人の區別あり其の間の事情を密かに推察すれは内地商人ハ内地商人のみ團結をなし沖繩商人は沖繩商人のみ團結をなし居るが故本懸商業界に及ぼす損益問題は共に協力一致と云ふことなく各團体の協議は各團体に行はれ居りて本懸商業家一般の意向が一致せざるより商業界に於て决議したる事項は事の大小となく容易に捗どらざる有樣なり故に余は内地商人を案内して次きに沖縄商人を案内せんと欲するは本懸の商業家をして互に一致團結せんことを希望するが故なり
▲「トク 中馬辰次郞氏 仝氏は那覇區字西三十八番地に商店を開き重に穀物並に砂糖證をなし居れり仝氏の實兄中馬德太郞氏ハ大坂にありて仝地の商人中名望家の聞へある由なるが目下兄弟とも鹿兒島滊船會社の監査役にして大坂にては兄中馬徳太郞氏と大坪岩次郞氏の兄大坪嘉太郞氏の二名にて仝會社の爲めに大に力を盡し本懸にてハ中馬辰次郞氏と大坪岩次郞氏の二名にて矢張り仝會社の爲めに力を盡し居ると云ふ
▲■大峰抑吉氏 の商店は仝區字西十七番地にして商業は重に穀物茶砂糖の賣買を爲し居れり仝商店は宮崎懸黒岩商會の支店にして大峰抑吉氏は目下共同滊船會社の取締役たり
▲■大坪岩次郞氏 は仝區字西廿七番地に商店を開き重に米穀類並に砂糖を賣買し居れり仝氏の實兄大坪嘉太郞氏は大阪にありて目下大阪砂糖會社長にして又岩次郞氏は鹿兒島滊船會社の監査役たり
▲■小牧藤助氏 の商店は仝區西十番地にして本店は鹿兒島にありて小牧藤兵衛氏營理せり本懸にての商業は重に雜穀並に材木砂糖を賣買し居れり
▲■前田英次郞氏 は仝區字西六十九番地に商店を開き居りしが仝商店ハ鮫島氏の支店にして商業は重に穀物並に砂糖の賣買をなし居れり
現代仮名遣い表記
●寄留商人案内 (一)
本県の商業界を篤と観察すれば、内地商人並に沖縄商人の区別あり。其の間の事情を密かに推察すれば、内地商人は内地商人のみ団結をなし、沖縄商人は沖縄商人のみ団結をなし居るが故、本県商業界に及ぼす損益問題は共に協力一致と云うことなく、各団体の協議は各団体に行われ居りて、本県商業家一般の意向が一致せざるより商業界に於て決議したる事項は、事の大小となく容易に捗どらざる有様なり。故に余は内地商人を案内して次ぎに沖縄商人を案内せんと欲するは、本県の商業家をして互に一致団結せんことを希望するが故なり。
▲「トク 中馬辰次郎氏 同氏は那覇区字西三十八番地に商店を開き、重に穀物並に砂糖商をなし居れり。同氏の実兄中馬徳太郎氏は大坂にありて、同地の商人中名望家の聞えある由なるが、目下兄弟とも鹿児島汽船会社の監査役にして、大坂にては兄中馬徳太郎氏と大坪岩次郎氏の兄大坪嘉太郎氏の二名にて同会社の為めに大に力を尽し、本県にては、中馬辰次郎氏と大坪岩次郎氏の二名にて矢張り同会社の為めに力を尽し居ると云う。
▲■大峰抑吉氏 の商店は同区字西十七番地にして、商業は重に穀物茶砂糖の売買を為し居れり。同商店は宮崎県黒岩商会の支店にして、大峰抑吉氏は目下共同汽船会社の取締役たり。
▲■大坪岩次郎氏 は同区字西二十七番地に商店を開き、重に米穀類並に砂糖を売買し居れり。同氏の実兄大坪嘉太郎氏は、大阪にありて目下大阪砂糖会社長にして又岩次郎氏は鹿児島汽船会社の監査役たり。
▲■小牧藤助氏 の商店は同区西十番地にして、本店は鹿児島にありて小牧藤兵衛氏営理せり。本懸にての商業は重に雑穀並に材木砂糖を売買し居れり。
▲■前田英次郎氏 は同区字西六十九番地に商店を開き居りしが、同商店は鮫島氏の支店にして、商業は重に穀物並に砂糖の売買をなし居れり。