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領有権明示措置として/ 無人灯台の設置要請
原文表記
領有権明示措置として 無人灯台の設置要請
政府へ折衝のため宮良地方庁長上覇
南西新報 昭和四十五年九月十九日
せん閣問題における台湾国府の国旗掲揚、これに伴う琉球政府警察本部の救難艇「ちとせ」による同国旗の撤去など同群島の領有権、大陸ダナ海底油田など情勢はますます複雑化しているが琉球政府としてはこの際領有権明示の措置として同群島に無人気象観測所の設置を本土復帰対策予算の中で計画しているという新聞報道に八重山地方庁ではこの際これに便乗して漁民の要望である無人灯台の設置方をこの際実現するよう政府に要請することになり用務のため急拠上覇する宮良地方庁長が強力に折衝することになつた。
せん閣群島の領有権問題は同群島内の魚釣島における国府国旗の掲揚問題、これに伴う琉球警察本部の救難艇「ちとせ」による同国旗の撤去で同群島をめぐる領有権問題、大陸ダナ油田の採掘権問題など事態は新たな段階を迎え情勢はますます複雑化する様相を見せている。
このような複雑な情勢の中で琉球政府としてはこの際さらに領土権を明示するためにこれまでの行政区域の標示の外に何等かの措置を構ずる必要があるとして七二年の本土復帰対策予算のなかで同群島に無人気象観測所の設置を計画しているこれに対して八重山地方庁ではかねてから同群島の台湾漁船の領海侵犯や漁夫の不法上陸の取締り方について本庁に要請していたがこの際政府の無人観測所よりも八重山の漁民が要望している無人灯台を全額本土政府負担で設置して貰いたいと政府に訴えることになり宮良地方庁長は、きのう南西航空一便で上覇した。
この無人灯台の設置の必要性は①これまで同群島附近に出漁する漁船の航路標がない。
②さらに事故などでひよう流した場合大てい北上して同島付近に到達していることはこれまでの遭難事故で幾多の事例が残つていること。
③、同島付近は南方から本土に向けて航行する本土籍船や外国船等の航路の要衝にあたる。
④、領有権明示の方法としては気象観測所より国際関係から見ても灯台の設置がよい。
⑤、同群島の気象観測所は石垣島の北方にあたるため八重山住民にとつてはあまり実利的でない。
この宮良地方庁長の無人灯台設置案について玉城水産係長は「漁民がこれまで必要を感じていたものであつたが工事やその他管理費にもばく大な金がかかるということで陳情要請をさし控えていたが―同群島が今日のように領有権問題で騒がれるようであつてみればもつと早く設置しておけばよかつたのにと思われる。
しかしこれまでは無人島であまりに関心が薄かつたが石油資源があるということであるならばこの際これに便乗して灯台設置を実現して漁民にもその余たくを与えて欲しい」と語つている
現代仮名遣い表記
領有権明示措置として 無人灯台の設置要請
政府へ折衝のため宮良地方庁長上覇
南西新報 昭和四十五年九月十九日
せん閣問題における台湾国府の国旗掲揚、これに伴う琉球政府警察本部の救難艇「ちとせ」による同国旗の撤去など、同群島の領有権、大陸ダナ海底油田など、情勢はますます複雑化しているが、琉球政府としてはこの際領有権明示の措置として同群島に無人気象観測所の設置を本土復帰対策予算の中で計画しているという新聞報道に、八重山地方庁ではこの際これに便乗して漁民の要望である無人灯台の設置方をこの際実現するよう政府に要請することになり、用務のため急拠上覇する宮良地方庁長が強力に折衝することになった。
せん閣群島の領有権問題は同群島内の魚釣島における国府国旗の掲揚問題、これに伴う琉球警察本部の救難艇「ちとせ」による同国旗の撤去で、同群島をめぐる領有権問題、大陸ダナ油田の採掘権問題など事態は新たな段階を迎え、情勢はますます複雑化する様相を見せている。
このような複雑な情勢の中で琉球政府としては、この際さらに領土権を明示するために、これまでの行政区域の標示の外に何等かの措置を講ずる必要があるとして、七二年の本土復帰対策予算のなかで同群島に無人気象観測所の設置を計画している。これに対して、八重山地方庁ではかねてから同群島の台湾漁船の領海侵犯や漁夫の不法上陸の取締り方について本庁に要請していたが、この際政府の無人観測所よりも八重山の漁民が要望している無人灯台を全額本土政府負担で設置して貰いたいと政府に訴えることになり、宮良地方庁長は、きのう南西航空一便で上覇した。
この無人灯台の設置の必要性は①これまで同群島附近に出漁する漁船の航路標がない。
②さらに事故などでひょう流した場合、大てい北上して同島付近に到達していることは、これまでの遭難事故で幾多の事例が残っていること。
③同島付近は南方から本土に向けて航行する本土籍船や外国船等の航路の要衝にあたる。
④領有権明示の方法としては、気象観測所より国際関係から見ても灯台の設置がよい。
⑤同群島の気象観測所は石垣島の北方にあたるため、八重山住民にとってはあまり実利的でない。
この宮良地方庁長の無人灯台設置案について玉城水産係長は「漁民がこれまで必要を感じていたものであったが、工事やその他管理費にもばく大な金がかかるということで陳情要請をさし控えていたが―同群島が今日のように領有権問題で騒がれるようであってみれば、もっと早く設置しておけばよかったのにと思われる。
しかしこれまでは無人島であまりに関心が薄かったが、石油資源があるということであるならば、この際これに便乗して灯台設置を実現して漁民にもその余たくを与えて欲しい」と語っている。