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せん閣油田の開発と真相/ その二つの側面
原文表記
せん閣油田の開発と真相 その二つの側面
南西新報 昭和四十五年八月十五日
五、ニユーズウイーク誌〝兆ドル単位の油田〟と評価
せん閣油田が、一躍内外からの脚光をあび、世界の石油業界からその動向が注視されるようになつたのは一昨年十一月国連のエカフエのCCOP(アジア沿海鉱物資源共同探査調整委員会)の黄海、東支那海大陸棚の海底油田調査により、同列島周辺海域の石油埋蔵の有望性が報告されてからである。
調査結果から次の事が判明した。
①スパーカー(放電式超音波海底構造探査機)、人工地震法による同海域の調査で、大陸棚、黄海両地域の海底面下で沈でん層を探しあて、この海成新三紀層が石油及びガスを埋蔵している。
②この層はかなり厚く、2キロメートル以上の層厚もあり、黄海や揚子江などの中国大陸の大河により、運搬供給された有機物を豊富に含んだ沈でん物で構成されている。
③石油天然ガス賦存の最も有望な地域は「台湾北東のほぼ九州の五、六倍の面積に相当する二十万平方キロメートルの地域、即ちせん閣列島周辺海域であり、二番目は黄海にある三つの海盆―この三つは地続きだが、一つは韓国の近くに他の二つは中国大陸の近くにある。
即ち、この調査によつて判明された石油の根源岩である新第三紀系はせん閣列島周辺海域を中心に、北は対馬海きよう、南は台湾に至る迄の四一万平方キロメートルの広範囲におよぶ面積で広つており、その層厚は台湾北東の二〇万平方キロメートルの地域では、非常に厚く、場合によつては9キロメートルにも及ぶことも考えられ、容積は一〇〇万立方キロメートル以上の膨大な量にのぼる。また海底地層は緩かなしゆう曲帯構造で帯び大規模の海底油田が発見されたインドネシアのサラワク油田と構造がよくにている。
従つて同列島を中心とした東支那海大陸棚が中東についで今後、大規模の原油の供給地になる可能性のある事がエカフエの調査結果から充分推測された。実際に、せん閣油田を開発する段階になつた場合、同油田の北東端に位置する男女列島や、南西端のせん閣列島が石油開発地基地としてフルに利用されることは申すまでもない。
以上述べたことについてエカフエより以前にも同海域で独自の調査を重ねて来たアメリカ海軍は次のような警告を発している。「(ワシントン八日(一九六九年六月)、ロイカー〝ES〟時事)米海軍の専門家たちは、世界最大の油田が中国本土の沿岸の黄海と東支那海の海底に横たわつている可能性があると考えているその根拠は、米海軍の海洋調査船のFVハント号(八五〇トン)に乗り組んでいる海洋学者たちからの報告だが、海軍当局はこの報告について慎重を期するようにと云う忠告と今後の研究結果を待つとの態度をとつている。」
せん閣油田の大きさを充分過ぎる程認識しているアメリカ海軍にとつて「あそこに大油田があるぞ」との吹聴の禁止、即ち慎重を期するようにとの「公式の忠告」は、せん閣油田の影響力の大きさとそれをめぐる国際石油カルテルによる先陣争い等を充分考慮してのことだといわれている。さらに最近のAP電は二年間にわたつて同海域を調べていたアメリカ海軍の海洋学者グループの報告を次のように伝えている。
(カリフオルニア州サンデエゴ発―AP電)油田の存在は、日本の南で地磁気と人工地震反応による調査及び海底土壌の分布状況をやつて判明したもので、台湾と日本の間の長さ六百マイル、厚さ三千フイートに及ぶしゆう曲沈でん層に世界有数の大油田があることが推察されるとせん閣油田に就いて報じ、更に「この発見について石油業界から付加情報を求める要請がわんさときており、台湾、日本韓国の石油開発資本は、同地域で既に調査にのりだしているといわれ、北米でも数社が同地域の貸与を求めていると聞く」(「沖繩タイムス」三月十日付)と米海軍予期したように活発化した内外の動きを示唆している。
アメリカの有力誌〝ニユーズウイーク〟は、六九年三月三日号で、ルイジアナ州と連邦政府がメキシコ湾沖の島々の石油利権に就いて争つた記事に関連して「日本と台湾との間の大陸棚に沿つた太平洋地域に広大な石油資源の埋蔵があることを海洋調査により指摘している」が、同油田の中すうがせん閣列島周辺海域を指していることは申すまでもない。
又、同誌は、朝鮮と中国本土の間の黄海の海底にも三ケ所ほどあると言及し、それらの油田の価値を〝兆ドル以上〟と高い評価を下している。然もこの〝兆ドル以上〟という値は、現在の沖繩の予算額約二億ドルの五千年分本土国家予算額約二百二二億ドルの約四十年分のばく大な額にのぼることになり、その値からしても、せん閣油田の開発が地元沖繩住民にもたらす恩恵は、これまでの経済メリツトの常識をゆるやかに超える程の膨大なものであることが充分納得できよう。
昨年六月から七月にかけてせん閣列島周辺海域の総理府の東海大学への委嘱調査の際、調査船に報道関係者を一切乗せないと云うものものしさ(工藤海中開発技術協会理事の話)も前記の内外の諸情勢を考慮に入れると容易に理解できることであろう。
六、総理府の調査―世界有数の油田と評価
確かに、調査の際も慎重極まる措置を必要とするほど同油田の価値は大きいものである。それを本土政府の調査結果からみてみよう。「日本経済新聞」(一九六九年八月二八日)が伝える所によれば、この調査では同海域に「海底約二五〇〇メートル迄の地質が判明したとされ、この段階で既に世界有数の油田になる可能性が十分考えられるが、来年度行う五〇〇〇メートルの調査結果によつて具体的にどの程度の大油田になるか見当がつくといわれている」、さらに注目すべきことは「テストボーリングは四六年に行う予定であるが、アラスカのクツク湾のように、いきなり大量の原油が噴出することも考えられ、それを止める処理が現在の日本の技術では困難とされている。また、石油でなくガスが出た場合には膨大な量になるので、専問家筋によると予めパイプラインの施設が必要となる。
いずれにしても(台湾の)錦水油田、日本海油田の資源の厚さ幅とも遙かにしのぐものであり…」とせん閣油田の評価しているが「総理府が調査した報告書の具体的内容は全く公表せず、政府部内でも参事官クラス以上に限つてプリントを配る程の慎重さ」(「琉球新報」十月一七日付)と云うことからも言わずもがな、同油田の価値の膨大さとその影響力の大きさが推■量られよう。所要原油の九九%を外国に依存している日本の石油政策の動向は、せん閣油田の今後の開発如何にその比重がかかつてくることは、これまでの調査結果からも明らかである。
従つて、通産省をはじめ業界にとつて挙国一致で鉱業法を改正してでも、同油田の開発権―いわゆる鉱業権の地元からの奪取に狂奔せざるを得なくなる。
然も、石油公団が次に述べるように地元沖繩の主権を侵害し、敢て脱法行為を犯してまで―鉱業権の取得に執念を燃しているは彼らがせんかく油田の規模の大きさに驚嘆しているからである。
現代仮名遣い表記
せん閣油田の開発と真相 その二つの側面
南西新報 昭和四十五年八月十五日
五、ニューズウィーク誌〝兆ドル単位の油田〟と評価
せん閣油田が、一躍内外からの脚光をあび、世界の石油業界からその動向が注視されるようになったのは、一昨年十一月、国連のエカフェのCCOP(アジア沿海鉱物資源共同探査調整委員会)の黄海、東支那海大陸棚の海底油田調査により、同列島周辺海域の石油埋蔵の有望性が報告されてからである。
調査結果から次の事が判明した。
①スパーカー(放電式超音波海底構造探査機)、人工地震法による同海域の調査で、大陸棚、黄海両地域の海底面下で沈でん層を探しあて、この海成新三紀層が石油及びガスを埋蔵している。
②この層はかなり厚く、2キロメートル以上の層厚もあり、黄海や揚子江などの中国大陸の大河により、運搬供給された有機物を豊富に含んだ沈でん物で構成されている。
③石油天然ガス賦存の最も有望な地域は「台湾北東のほぼ九州の五、六倍の面積に相当する二十万平方キロメートルの地域、即ちせん閣列島周辺海域であり、二番目は黄海にある三つの海盆―この三つは地続きだが、一つは韓国の近くに、他の二つは中国大陸の近くにある。
即ち、この調査によって判明された石油の根源岩である新第三紀系は、せん閣列島周辺海域を中心に、北は対馬海きょう、南は台湾に至る迄の四一万平方キロメートルの広範囲におよぶ面積で広っており、その層厚は台湾北東の二〇万平方キロメートルの地域では、非常に厚く、場合によっては9キロメートルにも及ぶことも考えられ、容積は一〇〇万立方キロメートル以上の膨大な量にのぼる。また海底地層は緩かなしゅう曲帯構造で帯び大規模の海底油田が発見されたインドネシアのサラワク油田と構造がよくにている。
従って同列島を中心とした東支那海大陸棚が中東についで今後、大規模の原油の供給地になる可能性のある事がエカフェの調査結果から充分推測された。実際に、せん閣油田を開発する段階になった場合、同油田の北東端に位置する男女列島や、南西端のせん閣列島が石油開発地基地としてフルに利用されることは申すまでもない。
以上述べたことについて、エカフェより以前にも同海域で独自の調査を重ねて来たアメリカ海軍は次のような警告を発している。「(ワシントン八日(一九六九年六月)、ロイカー〝ES〟時事)米海軍の専門家たちは、世界最大の油田が中国本土の沿岸の黄海と東支那海の海底に横たわっている可能性があると考えている。その根拠は、米海軍の海洋調査船のFVハント号(八五〇トン)に乗り組んでいる海洋学者たちからの報告だが、海軍当局はこの報告について慎重を期するようにと言う忠告と今後の研究結果を待つとの態度をとっている。」
せん閣油田の大きさを充分過ぎる程認識しているアメリカ海軍にとって「あそこに大油田があるぞ」との吹聴の禁止、即ち慎重を期するようにとの「公式の忠告」は、せん閣油田の影響力の大きさとそれをめぐる国際石油カルテルによる先陣争い等を充分考慮してのことだといわれている。さらに最近のAP電は二年間にわたって同海域を調べていたアメリカ海軍の海洋学者グループの報告を次のように伝えている。
(カリフォルニア州サンデエゴ発―AP電)油田の存在は、日本の南で地磁気と人工地震反応による調査及び海底土壌の分布状況をやって判明したもので、台湾と日本の間の長さ六百マイル、厚さ三千フィートに及ぶしゅう曲沈でん層に世界有数の大油田があることが推察されるとせん閣油田に就いて報じ、更に「この発見について石油業界から付加情報を求める要請がわんさときており、台湾、日本、韓国の石油開発資本は、同地域で既に調査にのりだしているといわれ、北米でも数社が同地域の貸与を求めていると聞く」(「沖繩タイムス」三月十日付)と米海軍予期したように活発化した内外の動きを示唆している。
アメリカの有力誌〝ニューズウィーク〟は、六九年三月三日号で、ルイジアナ州と連邦政府がメキシコ湾沖の島々の石油利権に就いて争った記事に関連して「日本と台湾との間の大陸棚に沿った太平洋地域に、広大な石油資源の埋蔵があることを海洋調査により指摘している」が、同油田の中すうがせん閣列島周辺海域を指していることは申すまでもない。
又、同誌は、朝鮮と中国本土の間の黄海の海底にも三ケ所ほどあると言及し、それらの油田の価値を〝兆ドル以上〟と高い評価を下している。然もこの〝兆ドル以上〟という値は、現在の沖縄の予算額約二億ドルの五千年分、本土国家予算額約二百二二億ドルの約四十年分のばく大な額にのぼることになり、その値からしても、せん閣油田の開発が地元沖縄住民にもたらす恩恵は、これまでの経済メリットの常識をゆるやかに超える程の膨大なものであることが充分納得できよう。
昨年六月から七月にかけてせん閣列島周辺海域の総理府の東海大学への委嘱調査の際、調査船に報道関係者を一切乗せないと言うものものしさ(工藤海中開発技術協会理事の話)も前記の内外の諸情勢を考慮に入れると容易に理解できることであろう。
六、総理府の調査―世界有数の油田と評価
確かに、調査の際も慎重極まる措置を必要とするほど、同油田の価値は大きいものである。それを本土政府の調査結果からみてみよう。「日本経済新聞」(一九六九年八月二八日)が伝える所によれば、この調査では同海域に「海底約二五〇〇メートル迄の地質が判明したとされ、この段階で既に世界有数の油田になる可能性が十分考えられるが、来年度行う五〇〇〇メートルの調査結果によって具体的にどの程度の大油田になるか見当がつくといわれている」、さらに注目すべきことは「テストボーリングは四六年に行う予定であるが、アラスカのクック湾のように、いきなり大量の原油が噴出することも考えられ、それを止める処理が現在の日本の技術では困難とされている。また、石油でなくガスが出た場合には、膨大な量になるので、専門家筋によると予めパイプラインの施設が必要となる。
いずれにしても(台湾の)錦水油田、日本海油田の資源の厚さ幅とも遙かにしのぐものであり…」とせん閣油田の評価しているが「総理府が調査した報告書の具体的内容は全く公表せず、政府部内でも参事官クラス以上に限ってプリントを配る程の慎重さ」(「琉球新報」十月一七日付)と言うことからも言わずもがな、同油田の価値の膨大さとその影響力の大きさが推■量られよう。所要原油の九九%を外国に依存している日本の石油政策の動向は、せん閣油田の今後の開発如何にその比重がかかってくることは、これまでの調査結果からも明らかである。
従って、通産省をはじめ業界にとって挙国一致で鉱業法を改正してでも、同油田の開発権―いわゆる鉱業権の地元からの奪取に狂奔せざるを得なくなる。
然も、石油公団が次に述べるように、地元沖縄の主権を侵害し、敢て脱法行為を犯してまで―鉱業権の取得に執念を燃しているは彼らがせんかく油田の規模の大きさに驚嘆しているからである。