キーワード検索

社説 せん閣列島、/ 竹富島附近の地下資源に関心を!!

掲載年月日:1969/4/3(木) 昭和44年
メディア:南西新報 1面 種別:記事

原文表記

社説 せん閣列島、竹富島付近の地下資源に関心を‼
南西新報 昭和四十四年四月三日

せん閣列島周辺の海底油田や小竹富島から石垣島観音崎一帯にかけての天然石油ガス等の地下資源の問題が最近クローズアツプされ、その採掘権をめぐつてペルシヤ鉱業開発株式会社代表大見謝恒寿氏と日本石油公団の古堅総光氏が争い新聞紙上をにぎわしている。
 石油資源の開発競争
せん閣列島周辺の海底油田層については十数年前より地質学者間で海底の大陸ダナ沿いに大量の油田層があるのではないかとの説が唱えられていた近年になつて世界の石油資源はあと四十年から五十年ではないかとその限界問題が台頭し出し新しい石油資源の開発という問題が各国で真剣に考えられ出すようになつた。
世界第二次大戦はドイツのザール地方の炭田や日本の南方石油資源の獲得がその原因の一部をなしているとさえ称されている。戦後各国は学術調査の名をかりて資源探査に血まなこになつて競争をはじめ米国の地球深部の調査や米ソ日仏の南極大陸の探険などはその一端であると云われる。
このような石油資源開発競争のなかで最近最も注目され出したのが米国のメキシコ湾内の海底石油資源とせん閣列島附近の大陸ダナ海底油田層の問題である。
これらの海底資源の開発には高水準の綿密な学術調査や世界的な科学技術陣とぼう大な資金を必要とするといわれているのでその詳細は知る由もないが―そうだからと云つてこれに無関心でおつてもよいということにはならない。
殊にせん閣列島は石垣市の行政区域内に属し、竹富島は、われわれの目と鼻の先にある。
去る三月二十二日の石垣市の第三回定例議会で質問第一陣に新垣仙永市議が、この問題について市当局に質したが課税の対象としての関心しか示さず質問者と答弁者との間に相当の感覚のズレのあるのが感得された。
文館で開かれた八重山開発期成会の専門部会の席上で八重電常務の石垣信亨氏が八重山の経済に大きな影響を及ぼすものと見られる本問題について期成会として考えるべきではないかとの趣旨の発言をなしたが、問題が大き過ぎるとして何等の反応を見られなかつた。
 有望な天然ガス資源
琉球政府部内では、「とても沖繩人の政府の手に負えるものではない」との考え方もあつて傍観的態度にあるように見受けられるが資源の乏しい沖繩の現状から見て否が応でも関心を持つ必要があると思うがどうだろう。
しかしこれと関連する竹富島から石垣島の観音崎一帯における天然石油ガス資源については、日政援助による第六次調査が終了し、全琉のガス資源の分布や埋蔵量の推定などその全容が報告され、沖繩本島南部では企業的着手の段階にまでこぎつけ通産局ではその指導に積極的に乗り出すと伝えられている。
沖繩南部のガス資源が企業的採掘の階段まであるとするならば竹富島のガス資源も他力を待つまでもなく自力でも充分その可能性はあるのではないかという予想が出来る。
石油の場合は一、〇〇〇メートルから二、〇〇〇メートルの試掘一本の費用が二〇万ドル以上(非公式)もかかるといわれるに反しガスの場合は、五、八〇〇ドル(通産局の新聞発表)しか要しないと云われている。
現在採掘権を申請中といわれるペルシヤ鉱業の大見謝氏の試掘と見られる竹富小学校裏の試掘の根跡はヤンマー五、六馬力位のもので一インチ半程のパイプを一〇〇米位打ち込む程度である。
もち論竹富島の場合は海岸線から一〇〇〇米位の沖合に水深二十米の海中に噴出している冷泉と関連しているため、その程度で済んだかも知らないが素人目に見て解せない点が多い。
これに対して登野城の森山半蔵氏は、この冷泉を約四、〇〇〇メートルの距離にある観音崎までパイプで導入すべく五年前に海底布設を行政主席に申請して許可を取得している。
しかしこのパイプの海底布設ということはばく大な費用を要するため企業的な困難性が伏在している。
宮古の平良市における例をとると真栄城市長が計画した池間島への三、〇〇〇メートルの水道導水管の海底布設案が当初十五万ドル程度を予想し政府の半額補助で可能かに見えたが本土から技術者を招へいし実施計画案によつて見積らせたところ三十万ドル近くを要するということで何時の間にか沙汰止みの状態になつている。
これから見て四、〇〇〇米の距離にある竹富島からのパイプによる海底導入計画案の可否については凡その見当がつく。
それよりも日政援助によるガス資源調査結果に基づき観音崎一帯の海岸に深度二、〇〇〇米のパイプを打ち込み採掘した天然ガスをガス容器に充てんして帀販すれば充分企業的可能性はあるのでないか。
那覇や本土に見られる都市ガスが何れも赤字経営で四苦八苦しているのは配管供給によるばく大な工事資金を投入したのが原因ではないかと思われる。
戦前台湾の新竹の油田は石油採掘は日本石油KKが行い天然石油ガスは新竹市が市直営で行い低廉で豊富に供給し市民の文化的生活の向上に多大な寄与をなしていた。
殊に天然ガスはプロパンガス等と異なり無臭無害であるという特点がある
身近な問題としてとらえよ
先般親善訪問で来島した岡崎市の大田市長は素人考えで温泉発堀を思い立ち議会に試掘に要する予算を要求イチかバチか政治生命をかけてボーリングをなし温泉を掘りあて市の経済的発展に大きく貢献することが出来たという。
大田市長は「とにかく掘つて見ることだ―経済開発は常に立体的に考えて見ることである。」と強調していたが石垣市や竹富町にとつて他山の石として取り上げてもよい要素を多分に含んでいると思われる。
幸いに近く石垣市から岡崎市親善訪門団が旅立つのでこの機会に単なる友好的観光気分にのみ浮かれずに地道にこれらのことを考え合せて視察してくることも必要ではなかろうか。
又近く六月には石油公団の調査団や七月には東海大学の学術調査団が来島すると伝えられているのでこれらの人々の受け入れ態勢を整え、講演会や懇談会を催し石油資源、天然ガス或は八重山群島せん閣列島附近の海底の地質構造や経済的利用効果ということなども合せて多くの知識を導入し、われわれの周辺に起りつつある地下資源の活用問題についてもつと身近な問題としてとらえ住民の関心を高めることはいろいろな意味で最も大切なことだと思う。

現代仮名遣い表記

社説 せん閣列島、竹富島付近の地下資源に関心を‼
南西新報 昭和四十四年四月三日

せん閣列島周辺の海底油田や小竹富島から石垣島観音崎一帯にかけての天然石油ガス等の地下資源の問題が最近クローズアップされ、その採掘権をめぐってペルシャ鉱業開発株式会社代表大見謝恒寿氏と日本石油公団の古堅総光氏が争い新聞紙上をにぎわしている。
 石油資源の開発競争
せん閣列島周辺の海底油田層については、十数年前より地質学者間で海底の大陸ダナ沿いに大量の油田層があるのではないかとの説が唱えられていた。近年になって世界の石油資源はあと四十年から五十年ではないかとその限界問題が台頭し出し、新しい石油資源の開発という問題が各国で真剣に考えられ出すようになった。
世界第二次大戦はドイツのザール地方の炭田や日本の南方石油資源の獲得がその原因の一部をなしているとさえ称されている。戦後各国は学術調査の名をかりて資源探査に血まなこになって競争をはじめ、米国の地球深部の調査や米ソ日仏の南極大陸の探検などはその一端であると言われる。
このような石油資源開発競争のなかで最近最も注目され出したのが米国のメキシコ湾内の海底石油資源とせん閣列島附近の大陸ダナ海底油田層の問題である。
これらの海底資源の開発には高水準の綿密な学術調査や世界的な科学技術陣とぼう大な資金を必要とするといわれているのでその詳細は知る由もないが―そうだからと言ってこれに無関心でおってもよいということにはならない。
殊にせん閣列島は石垣市の行政区域内に属し、竹富島は、われわれの目と鼻の先にある。
去る三月二十二日の石垣市の第三回定例議会で質問第一陣に新垣仙永市議が、この問題について市当局に質したが、課税の対象としての関心しか示さず、質問者と答弁者との間に相当の感覚のズレのあるのが感得された。
文館で開かれた八重山開発期成会の専門部会の席上で八重電常務の石垣信亨氏が八重山の経済に大きな影響を及ぼすものと見られる本問題について期成会として考えるべきではないかとの趣旨の発言をなしたが、問題が大き過ぎるとして何等の反応を見られなかった。
 有望な天然ガス資源
琉球政府部内では、「とても沖縄人の政府の手に負えるものではない」との考え方もあって傍観的態度にあるように見受けられるが、資源の乏しい沖縄の現状から見て否が応でも関心を持つ必要があると思うがどうだろう。
しかし、これと関連する竹富島から石垣島の観音崎一帯における天然石油ガス資源については、日政援助による第六次調査が終了し、全琉のガス資源の分布や埋蔵量の推定などその全容が報告され、沖縄本島南部では企業的着手の段階にまでこぎつけ、通産局ではその指導に積極的に乗り出すと伝えられている。
沖縄南部のガス資源が企業的採掘の階段まであるとするならば、竹富島のガス資源も他力を待つまでもなく自力でも充分その可能性はあるのではないかという予想が出来る。
石油の場合は一、〇〇〇メートルから二、〇〇〇メートルの試掘一本の費用が二〇万ドル以上(非公式)もかかるといわれるに反しガスの場合は、五、八〇〇ドル(通産局の新聞発表)しか要しないと言われている。
現在採掘権を申請中といわれるペルシャ鉱業の大見謝氏の試掘と見られる竹富小学校裏の試掘の根跡は、ヤンマー五、六馬力位のもので一インチ半程のパイプを一〇〇米位打ち込む程度である。
もち論竹富島の場合は海岸線から一〇〇〇米位の沖合に水深二十米の海中に噴出している冷泉と関連しているため、その程度で済んだかも知らないが、素人目に見て解せない点が多い。
これに対して登野城の森山半蔵氏は、この冷泉を約四、〇〇〇メートルの距離にある観音崎までパイプで導入すべく五年前に海底布設を行政主席に申請して許可を取得している。
しかしこのパイプの海底布設ということはばく大な費用を要するため、企業的な困難性が伏在している。
宮古の平良市における例をとると、真栄城市長が計画した池間島への三、〇〇〇メートルの水道導水管の海底布設案が当初十五万ドル程度を予想し、政府の半額補助で可能かに見えたが、本土から技術者を招へいし実施計画案によって見積らせたところ、三十万ドル近くを要するということで、何時の間にか沙汰止みの状態になっている。
これから見て四、〇〇〇米の距離にある竹富島からのパイプによる海底導入計画案の可否については凡その見当がつく。
それよりも日政援助によるガス資源調査結果に基づき、観音崎一帯の海岸に深度二、〇〇〇米のパイプを打ち込み、採掘した天然ガスをガス容器に充てんして市販すれば充分企業的可能性はあるのでないか。
那覇や本土に見られる都市ガスが何れも赤字経営で四苦八苦しているのは、配管供給によるばく大な工事資金を投入したのが原因ではないかと思われる。
戦前台湾の新竹の油田は、石油採掘は日本石油KKが行い、天然石油ガスは新竹市が市直営で行い、低廉で豊富に供給し、市民の文化的生活の向上に多大な寄与をなしていた。
殊に天然ガスはプロパンガス等と異なり無臭無害であるという特点がある。
身近な問題としてとらえよ
先般親善訪問で来島した岡崎市の大田市長は、素人考えで温泉発堀を思い立ち議会に試掘に要する予算を要求、イチかバチか政治生命をかけてボーリングをなし温泉を掘りあて、市の経済的発展に大きく貢献することが出来たという。
大田市長は「とにかく掘って見ることだ―経済開発は常に立体的に考えて見ることである。」と強調していたが、石垣市や竹富町にとって他山の石として取り上げてもよい要素を多分に含んでいると思われる。
幸いに近く石垣市から岡崎市親善訪門団が旅立つので、この機会に単なる友好的観光気分にのみ浮かれずに、地道にこれらのことを考え合せて視察してくることも必要ではなかろうか。
又近く六月には石油公団の調査団や、七月には東海大学の学術調査団が来島すると伝えられているので、これらの人々の受け入れ態勢を整え、講演会や懇談会を催し、石油資源、天然ガス或は八重山群島せん閣列島附近の海底の地質構造や経済的利用効果ということなども合せて多くの知識を導入し、われわれの周辺に起りつつある地下資源の活用問題についてもっと身近な問題としてとらえ、住民の関心を高めることはいろいろな意味で最も大切なことだと思う。