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◎鰹節改良に關し武藤氏に酬ふ 衣雲漁夫
原文表記
◎鰹節改良に關し
武藤氏に酬ふ 衣雲漁夫
古賀商店武藤太一郞氏足下 足下は本月十三日發行の本紙■予■過は發表せし鰹節改良鄙見に對し懇切なる教を与へられしは誠に難有感謝■至し候右は早速本紙を借りて感謝する所なりしも田舎に蟄居せる漁夫故碌に新聞も取續せず偶々今日拜見せし爲め今に後れたる次第に候則ち予の純土佐形を賛成せざる第二の理由に痛く御迷惑を御掛け申候趣き誠に恐入候予は决して足下等の土佐節の價値を知らざるものと論じたる譯に非ず平素足下等の多數が薩摩節を好むの如く見受けたるを以て單に足下等も薩摩節に賛成し居らるゝ事を蔭に發表せんとの意に出しに止りしものにて前後綜合すれば决して足下等の土佐節の價値を知らざるものとは讀者諸賢も見受ざりしと察居候得其固より予の過言は此に謝す所に候然に幸本縣節形に就ては足下等も御賛同のやうでいるから予は非常に滿足する所なるが故に茲に本紙を借りて感謝の意を表する次第に候
現代仮名遣い表記
◎鰹節改良に関し
武藤氏に酬ふ 衣雲漁夫
古賀商店、武藤太一郎氏足下 足下は本月十三日発行の本紙■予■過は、発表せし鰹節改良鄙見に対し、懇切なる教を与へられしは、誠に難有感謝■至し候。右は早速本紙を借りて感謝する所なりしも、田舎に蟄居せる漁夫故碌に、新聞も取続せず、偶々今日拝見せし為め、今に後れたる次第に候。則ち予の、純土佐形を賛成せざる、第二の理由に痛く、御迷惑を御掛け申候。趣き誠に恐入候。予は、決して足下等の土佐節の、価値を知らざるものと論じたる訳に非ず、平素足下等の多数が、薩摩節を好むの如く、見受けたるを以て、単に足下等も、薩摩節に賛成し、居らるる事を蔭に発表せんとの意に出しに、止りしものにて前後総合すれば、決して足下等の土佐節の価値を、知らざるものとは、読者諸賢も見受ざりしと察居候。得其固より予の過言は、此に謝す所に候然に幸本県節形に就ては、足下等も御賛同のようでいるから、予は非常に満足する所なるが故に、茲に本紙を借りて感謝の意を表する次第に候。