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◎本県出品物槪評 (續)

掲載年月日:1911/3/13(月) 明治44年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

◎本縣出品物槪評(續)
△鯣 本縣出品は他縣と其種類を異にせるものにして從來一種特異のものとして市塲に位置を保てり今回の出品中には從來の製法と異り改良を加へたるものを見る
△鱶鰭 本縣の出品は原料の豊富にして善良のもの多きも製造方法に甚しき縣隔あり且つ一般に整理不良なる爲め品位揚らす折角の好原料の價値を下すもの少なからず一層改良の普及を圖るを必要とし
△鰹節 本縣鰹節の聯合其■會に出品せるは今回を以て嚆矢とせるに拘らず出品數及び品質に於て人に見る可きもの多く同縣として異常の發達と云はざるを得ず蓋し同縣各嶋沿海は鰹の生息常に多く有數なる漁塲なるを以て宮崎鹿兒嶋の漁船の出漁する者多かりしが近來沖繩縣民の着業するもの漸く多く從つて鰹節の製造も亦た盛大となり四十二年度の其產額二十萬圓に達せんとし當局者も亦た節類製造の改良を獎勵し漸く其面目を改めんとせり今日の状況を以て益々之が漁獲及び製造の改良に努めば沖繩節とし一頭角を顯はすに至らん
△海參 本縣出品は特殊の原料にして他と比較す可らざるも之を前回に比すれば多く進歩の跡を認めず古賀辰四郞氏の出品は佳良なり
△眞珠 古賀(辰)四郞氏の出品は主として「マベ介」の眞珠を類聚せせり白眞珠      は珍品なれども惜しむらくは形状の欠ぐる所あり
△介殻 本縣特有の介殻に■て珍奇のもの少からず介層厚く且つ層々色彩を異にするもの多く彫刻其他工藝材料として適當なり殊に大見謝恒惇、古賀辰四郞出品は能く各種の介殻を類聚し參考に資するに足れり
△木竹材 本縣出品はへゴ材五点、黒木四点、桑材二点にして他縣と其出品種類を異にし比較する事能はず且つ其の產額用途少なしと雖同縣の特產品にして相當需用あるものなり
△椎茸 本縣は聯合各縣中產額最も僅少にして四十一年度の如きは僅かに五十斤價格十九圓に過ぎず斯業甚だ不振の狀况にあるも今回始て四点の小筋物を出品6せるは大に多とする所なり然れども其品位に至りしは甚だ粗惡にして舊法の串盛なるを以て乾燥色澤其に不良なるのみならず軸に孔を存じ又軸の分離折裂せるものあるは特に其品位を損する事大也今後製法の改良を望む (完)

現代仮名遣い表記

◎本県出品物概評(続)
△鯣 本県出品は、他県と其種類を異にせるものにして、從来一種特異のものとして、市場に位置を保てり、今回の出品中には、從来の製法と異り、改良を加へたるものを見る。
△鱶鰭 本県の出品は、原料の豊富にして、善良のもの多きも、製造方法に甚しき県隔あり、且つ一般に整理不良なる為め、品位揚らす折角の、好原料の価値を下すもの少なからず、一層改良の普及を図るを必要とし
△鰹節 本県鰹節の連合、其■会に出品せるは、今回を以て嚆矢とせるに拘らず、出品数及び品質に於て、人に見る可きもの多く、同県として異常の発達と云はざるを得ず。けだし同県各島沿海は、鰹の生息常に多く有数なる漁場なるを以て、宮崎、鹿児島の漁船の出漁する者、多かりしが、近来沖縄県民の着業するもの、漸く多く從つて、鰹節の製造もまた盛大となり、四十二年度のその産額二十万円に達せんとし、当局者もまた、節類製造の改良を奨励し、漸く其面目を改めんとせり、今日の状況を以て、益々これが漁獲、及び製造の改良に努めば、沖縄節とし一頭角を顕はすに至らん。
△海参 本県出品は、特殊の原料にして他と比較す可らざるも、これを前回に比すれば、多く進歩の跡を認めず、古賀辰四郎氏の出品は佳良なり。
△真珠 古賀(辰)四郎氏の出品は、主として「マベ介」の真珠を類聚せせり、白眞珠は珍品なれども惜しむらくは、形状の欠ぐる所あり。
△介殻 本県特有の介殻に■て、珍奇のもの少からず、介層厚く且つ、層々色彩を異にするもの多く、彫刻其他、工芸材料として適当なり。殊に大見謝恒惇、古賀辰四郎出品は、能く各種の介殻を類聚し参考に資するに足れり。
△木竹材 本県出品は、へゴ材五点、黒木四点、桑材二点にして他県と、其出品種類を異にし比較する事能はず、且つ其の産額用途少なしと雖同、県の特産品にして、相当需用あるものなり
△椎茸 本県は、連合各県中産額、最も僅少にして、四十一年度の如きは、僅かに五十斤価格十九円に過ぎず、斯業甚だ不振の状況にあるも今回始て、四点の小筋物を出品せるは大に、多とする所なり然れども、其品位に至りしは、甚だ粗悪にして旧法の串盛なるを以て、乾燥色沢、それに不良なるのみならず、軸に孔を存じ、又、軸の分離折裂せるものあるは、特にその品位を損する事大也、今後製法の改良を望む。 (完)