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三浦丸遭難劇
原文表記
●三浦丸遭難劇
▲三浦丸の遭難は仝縣下を騒がした未曾有の悲劇であるが人氣を引くに敏な■三■■は逸早くも此事件を脚色み大に觀客の心を動かし大入大評判の事■■■杯も劇中の一人物となつて■■と云ふ■を聞いたの■此間問人を誘ふて光つ明治座を見た
▲初幕は名護の濱で第一番に現はれるのは事務長えそれから故仲宗根、平良、宮城、比嘉の諸氏に扮したと思はるゝもの四五人登塲し僕に扮したと思はるゝものもつが■て登塲■名は言はないが各自の話に依つて其人■知らす様にしたのは一寸と考へた■のだ併■何れも態度服装言語は矢張り役者其のものであるが今一歩進んで言語動作に依つて其誰れなるかを識別せしむる様にしたいものだ
▲東京大阪邊
役者だと僕に扮する役者なら必ず僕に逢ふと僕の習癖特点を見抜いてからの舞台■登■位ひの事はする
▲斯う云ふ際物にはどうせ筋もある筈もなく深い意義もある筈なく随つ■深い感興■起さることも出來まいが旬日■前に直覺した大惨事を演するのだから■となく觀客の感興を勸すものとみへ中には夢中になつたっものも見受けた
▲僕は素より三浦丸に乘る氣もなかつた乘る氣にもならなかつたものが乘つて居なかつたのは當り前であり歸覇の上逢ふ人毎■好運とか天佑■か■ふ祝詞を受けるので實は御挨拶にも困つて居る次第だが芝居では乘船してから何か忘れ物をとりにと云ふて引返■更■濱に來■時は一聲の滊笛■殘して出船するのだから、乘ると乘らぬと卽ち生きると死ぬるとほんの間一髪たからこれでは實際好運見た是れでなければ芝居にもなるまい
現代仮名遣い表記
●三浦丸遭難劇
▲三浦丸の遭難は同県下を騒がした未曽有の悲劇であるが、人気を引くに敏な■三■■は逸早くも此事件を脚色み、大に観客の心を動かし大入大評判の事■■■杯も、劇中の一人物となつて■■と云ふ■を聞いたの■此間問人を誘ふて光つ明治座を見た。
▲初幕は名護の浜で第一番に現はれるのは事務長えそれから故仲宗根、平良、宮城、比嘉の諸氏に扮したと思はるゝもの四五人登塲し僕に扮したと思はるるものもつが■て登塲■名は言はないが各自の話に依つて其人■知らす様にしたのは一寸と考へた■のだ併■何れも態度服装言語は矢張り役者其のものであるが、今一歩進んで言語動作に依つて其誰れなるかを識別せしむる様にしたいものだ。
▲東京大阪辺
役者だと僕に扮する役者なら必ず僕に逢ふと僕の習癖特点を見抜いてからの舞台■登■位ひの事はする。
▲斯う云ふ際物にはどうせ筋もある筈もなく深い意義もある筈なく随つ■深い感興■起さることも出来まいが旬日■前に直覚した大惨事を演するのだから■となく観客の感興を勧すものとみへ中には夢中になつたっものも見受けた。
▲僕は素より三浦丸に乗る気もなかった。乗る気にもならなかったものが乗って居なかったのは当り前であり、帰覇の上逢う人毎■好運とか天佑■か■ふ祝詞を受けるので、実は御挨拶にも困つて居る次第だが、芝居では乗船してから何か忘れ物をとりにと云ふて引返■更■浜に来■時は一声の汽笛■残して出船するのだから、乗ると乗らぬと即ち生きると死ぬるとほんの間一髪たからこれでは実際好運見た是れでなければ芝居にもなるまい。