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◎三浦丸の公判

掲載年月日:1910/10/28(金) 明治43年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

◎三浦丸の公判
三十有餘の人命を空しく海底の藻屑に化せしめ責任者三浦丸船長仲村渠盛祿の公判は昨日午前九時より地方裁判所第二公判廷に於て開かる、縣下稀有の大惨事に關ぜる出來事とて當日の公判廷は定刻前より傍聽人犇々と詰掛け尙ほ廷外に傍聽する人も甚だ多かりき、船長仲村渠盛祿は元氣如何にも衰へたる風体にて首■垂れ屠塲に牽かるゝ牛の如く法官の前現はれるや例により住所氏名等の審問より■撿事は起つし起訴の理由を■じ船員法第十九條に該當し居るを以て同法第五十二條によりて處断すべきものと結がりそれより裁判長■糺問に移りて現塲の状況■糺し當時風位南東にありしに舩長が水上派出所沿岸に漂流せりとは事實上ありまじき事なりと詰じ■■■舩長は其時ブリツチにありて員舩をの指揮中風の爲め海中にさらはれしは事實なりと主張■漂着せる塲所が風位に反せるは如何なる變化なりしが知らずと云ひ其他二三の糺問を終りて現塲撿証をすべしと告げて閉廷したり、本日午前水上派出所沿岸の舩長漂着せる塲所の撿証を終へて更らに第二回の公判開始さるべしと云ふ

現代仮名遣い表記

◎三浦丸の公判
三十有余の人命を空しく海底の藻屑に化せしめ責任者三浦丸船長仲村渠盛禄の公判は昨日午前九時より地方裁判所第二公判廷に於て開かる、県下稀有の大惨事に関ぜる出来事とて当日の公判廷は定刻前より傍聴人犇々と詰掛け尚ほ廷外に傍聴する人も甚だ多かりき、船長仲村渠盛禄は元気如何にも衰へたる風体にて首■垂れ屠塲に牽かるゝ牛の如く法官の前現はれるや例により住所氏名等の審問より■撿事は起つし起訴の理由を■じ船員法第十九条に該当し居るを以て同法第五十二条によりて処断すべきものと結がりそれより裁判長■糾問に移りて現塲の状況■糾し当時風位南東にありしに舩長が水上派出所沿岸に漂流せりとは事実上ありまじき事なりと詰じ■■■舩長は其時ブリツチにありて員舩をの指揮中風の為め海中にさらはれしは事実なりと主張■漂着せる塲所が風位に反せるは如何なる変化なりしが知らずと云ひ其他二三の糾問を終りて現塲撿証をすべしと告げて閉廷したり、本日午前水上派出所沿岸の舩長漂着せる塲所の撿証を終へて更らに第二回の公判開始さるべしと云ふ