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●琉球群島に於ける古賀氏の功績(其七)
原文表記
●琉球群島に於ける古賀氏の功績(其七)
▲列島の交通運輸
同島に於ける事業、漸く其の緒に就くと共に本島との交通も從って繁劇を加ふるを以て汽船の購求を企圖し明治三十九年十一月臺灣総督府より三浦丸(百四十五噸)を購入し之を辰島丸と改稱し交通運輸に供したり
▲新事業の計画
其の後明治四十年珊瑚採収、鳥■の製造及び牧畜の業に着手し成績の如何は未だ擧がらずと雖も願る有望の事業なるべく尙同列嶋には野生の桑樹甚だ多きを以て今明年の中には養蠶をも試むる計劃あり
▲鑵詰製造
又、同列島附近の海洋は四時魚族群集し恰も其巣窟なるが如きの観ありて、予て氏は是等魚肉の鑵詰製造を發意し去る四十一年四月■縣嶋尻水産學校卒業生一名を傭聘し且つ同校教諭岩井氏の渡島を乞ひ指導を仰ぎたるに非常に効果あるべしとの報告ありあたるを以て是迄「アジサシ」其他海島の肉は油を搾り残滓を肥料に供したりしが岩井氏の案に依り鑵詰に製造するの有利なるを認めたれば茲に鑵詰製造を始むるの計畫を爲すに至れり
▲燐礦鳥糞の採窟
氏は豫て該列島の土壤が燐酸を含有し居るを知り明治四十年三月福岡鉱山監督署に採掘出願書を提出せしが翌四十一年二月上京し農學博士恒藤規隆氏に商議し鑛石の檢査を乞ひたるに同年五月博士自ら實地踏査の爲め列嶋を探險し其結果南小嶋に於ける藷畑の土壤中に多量の燐酸(二五パーセント)含有せることを發見したるが同博士の説に依れば右燐酸は全く鳥糞より成しものにて降雨の頻繁なる爲め鳥糞中の窒素並に燐酸の多分は雨水の爲め流出するも雨露に曝されざる洞穴岩陰等に堆積せしむるものは其儘に保存されて肥沃なる土壤を成したるなりといふ而して此種の土砂南小島のみを採集するも數千噸を得る事容易なるを以て北小島水禽群捿の個所を採集する時は一層多量の肥料を得らるべし加之博士は更に黄尾島に於て鳥糞の堆積層を發見したるが元來黄尾島は火山質の岩石並に玄武岩の崩壊したるものより成り土壤非常に吸水性に富み且つ仝嶋には信天翁の去來すること非常に多く又「カドコリ」は地中に穴を穿ちて其巣を營み夜は必ず其巣中に眠るを以て嶋上數十万の鳥の巣が出來從て鳥■の排泄物は地中に堆積し全嶋肥沃なる土壤を以て蔽はれ爲めに芭蕉又は唐芋の如き徒らに繁茂し居るのみならず實を結ばざる有機なり然れ共仝嶋は降雨の頻繁なるが爲め是等夥多の鳥糞は漸次に洗ひ去られ其山中にあるものの如きは樹蔭落葉を以て掩蔽せられたる箇灰の外は肥料として用ふるに足らしからずして只沿岸絕壁の周圍は一帶の草原繁茂し其落葉は積て二三寸の居を成し「カコドリ」は其中に無數の巣穴を穿ち居るを以て此の草原一帶の土壤のみは所謂恒藤博士の發見に係る鳥糞層にして土色暗黑脂肪光澤を有し一種の臭氣あり之を火中に投ずれば煙と臭氣とを發して燃焼す博士の説によれば南洋諸島より輸入する「グアノ」と同一にして本邦に於ては比類なき好肥料なりといへど未だ精密なる分析と測量とを終へざれは精確なる所は明らかならざれど右草原の面積は約五萬坪鳥糞層の厚さ約二尺及至三尺あり尙品質稍下る部分に至りては頗る廣き面積に亘れりといふ於茲古賀氏は徐ろに計畫を立し採掘に從事せんと企て居れり
現代仮名遣い表記
●琉球群島に於ける古賀氏の功績(其七)
▲列島の交通運輸
同島に於ける事業、漸く其の緒に就くと共に、本島との交通も従って繁劇を加うるを以て、汽船の購求を企画し、明治三十九年十一月、台湾総督府より三浦丸(百四十五噸)を購入し、之を辰島丸と改称し、交通運輸に供したり。
▲新事業の計画
其の後、明治四十年珊瑚採収、島■の製造及び牧畜の業に着手し、成績の如何は未だ挙がらずと雖も願る。有望の事業なるべく尚、同列嶋には野生の桑樹甚だ多きを以て、今明年の中には養蠶をも試むる計画あり。
▲鑵詰製造
又、同列島附近の海洋は、四時魚族群集し恰も、其巣窟なるが如きの観ありて、予て氏は是等魚肉の缶詰製造を発意し。去る四十一年四月■嶋尻水産学校卒業生一名を傭聘し且つ、同校教諭岩井氏の渡島を乞い指導を仰ぎたるに、非常に効果あるべしとの報告ありあたるを以て。是迄「アジサシ」其他海島の肉は、油を搾り残滓を肥料に供したりしが、岩井氏の案に依り関詰に製造するの有利なるを認めたれば、茲に缶詰製造を始むるの計画を為すに至れり。
▲燐鉱鳥糞の採掘
氏は予て該列島の土壌が、燐酸を含有し居るを知り、明治四十年三月、福岡鉱山監督署に採掘出願書を提出せしが、翌四十一年二月上京し農学博士恒藤規隆氏に商議し、鑛石の検査を乞いたるに、同年五月博士自ら実地踏査の為め、列嶋を探険し、其結果南小嶋に於ける藷畑の土壌中に、多量の燐酸(二五パーセント)含有せることを発見したるが、同博士の説に依れば、右燐酸は、全く鳥糞より成しものにて、降雨の頻繁なる為め、鳥糞中の窒素並に燐酸の多分は、雨水の為め流出するも、雨露に曝されざる洞穴岩陰等に堆積せしむるものは、其儘に保存されて肥沃なる土壌を成したるなりという。而して此種の土砂南小島のみを採集するも、数千頓を得る事容易なるを以て、北小島水禽群捿の個所を採集する時は、一層多量の肥料を得らるべし。加之博士は更に黄尾島に於て、鳥糞の堆積層を発見したるが、元来黄尾島は火山質の岩石並に、玄武岩の崩壊したるものより成り。土壌非常に吸水性に富み、且つ同嶋には信天翁の去来すること非常に多く。又「カドコリ」は地中に穴を穿ちて其巣を営み、夜は必ず其巣中に眠るを以て、嶋上数十万の鳥の巣が出来。従て鳥■の排泄物は地中に堆積し、全嶋肥沃なる土壌を以て蔽はれ為めに、芭蕉又は唐芋の如き、徒らに繁茂し居るのみならず実を、結ばざる有機なり。然れ共同嶋は、降雨の頻繁なるが為め、是等夥多の鳥糞は漸次に洗い去られ、其山中にあるものの如きは、樹蔭落葉を、以て掩蔽せられたる。箇灰の外は肥料として用うるに足らしからずして只、沿岸絶壁の周囲は一帯の草原繁茂し、其落葉は積て二三寸の居を成し、「カコドリ」は其中に無数の巣穴を穿ち居るを以て、此の草原一帯の土壌のみは所謂恒藤博士の発見に係る鳥糞層にして、土色暗黒脂肪光澤を有し、一種の臭気あり。之を火中に投ずれば煙と臭気とを発して燃焼す。博士の説によれば、南洋諸島より輸入する「グアノ」と同一にして、本邦に於ては比類なき好肥料なりといえど未だ、精密なる分析と測量とを終えざれば、精確なる所は明らかならざれど、右草原の面積は約五万坪。鳥糞層の厚さ約二尺及至三尺あり。尚品質稍下る部分に至りては、頗る広き面積に亘れりという。於茲古賀氏は徐ろに計画を立し、採掘に従事せんと企て居れり。