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◎島尻水産學校卒業生の近况
原文表記
◎島尻水産學校卒業生の近况
仝校卒業生の近況は頗る良好にして縣下各漁業地に其勢力を及ぼし其作業状態何も眞面目にして好評を博し従て各自の受くる報酬も宜しく今漁期與那國に至り玉城保太郎氏等の組合に加りたる四五名は何も百四五十圓宛の配當を受け古賀氏の尖閣列嶋及久米嶋大嶺氏の罐詰工場糸満物産會社の水産物取扱主任等に居る三人は何も其業務完全に担任し報酬十二圓乃至十八圓の割にあり慶良間渡嘉敷村に於けるサヾエ罐詰製造に從事せる二人の仝島出身者は昨年事業開始以來漸次順境に發達し其製品は山下商店特約の下に那覇を中心とし縣下各地の需用に應じつゝあり亦國頭郡金武村近海に於ける一人は父の漁業を改良しつゝ自營し居り先頃大村技師仝地出身の際不圖仝卒業生に出沖ひ其意見の適切なるに感し益々奮勵すべきを以てしたりと云ふ其他照島丸に三人逢■水産製造株式會社に三人あり特に他府縣に於て活動せるもの都合七人もありて二人は大日本水産會遠洋漁船水產丸の漁撈員となり二人は他の營業船に乘り一人は水產會の海■員養成所の練習生にして何しも信用を得其の報酬も右練習生を除くの外は十半圓内外を受け居るのみならず之等は向後五ヶ年乃至一ヶ年後には乙種以下の漁撈長免狀を受けるに履歴を得るものなれは彼等が歸縣本縣水產事業に貢献するの日近き將來にあるを知るべし而して尙ほ一人は靜岡縣岩科村の鰹節製造業者に雇はれ居るが雇主より此頃其技術の熟達に驚きたる書面渡嘉敷校長に來り居るとの事にて仝人は來年水產講習所の現業科に入學し節類製造の蘊奥を極めんと意氣込み其出身地なる知念村の補助を仰き度き旨齋藤郡長まで間接に願出來れりと云ふ一人は大分縣の罐詰製造株式會社に雇はれ食料の外六圓の給料を得つゝあるも當人無形の利益は寧ろ給金以上にありと喜べる書面來れる等仝校出身者の揃つて相當の活動をなせるは水產國の水產地たる本縣將來爲め日出度き事なん
現代仮名遣い表記
◎島尻水産学校卒業生の近況
同校卒業生の近況は、すこぶる良好にして、県下各漁業地にその勢力を及ぼし、その作業状態何も真面目にして好評を博し従て、各自の受くる報酬も宜しく、今漁期与那国に至り。玉城保太郎氏等の組合に加りたる四五名は、何も百四五十円宛の配当を受け、古賀氏の尖閣列嶋及久米嶋大嶺氏の、缶詰工場、糸満物産会社の、水産物取扱主任等に居る。三人は何も、その業務完全に担任し、報酬十二円乃至、十八円の割にあり。慶良間渡嘉敷村に於ける、サザエ缶詰製造に従事せる二人の同島出身者は、昨年事業開始以来、漸次順境に発達し、その製品は山下商店特約の下に、那覇を中心とし、県下各地の需用に応じつつあり、また国頭郡金武村近海に於ける一人は、父の漁業を改良しつつ自営し居り。先頃大村技師同地出身の際、不図同卒業生に出沖い、その意見の適切なるに咸し、益々、奮励すべきを以てしたりと云う。その他照島丸に、三人逢■水産製造株式会社に三人あり。特に、他府県に於て活動せるもの、都合七人もありて、二人は大日本水産会遠洋漁船水産丸の漁労員となり。二人は、他の営業船に乗り、一人は水産会の海■員養成所の練習生にして、何しも信用を得、其の報酬も右練習生を除くの外は、十半円内外を受け居るのみならず。これ等は、向後五ヶ年乃至、一ヶ年後には、乙種以下の漁労長免状を受けるに履歴を得るものなれば、彼等が帰県本県水産事業に貢献するの日。近き将来にあるを知るべし。しかして尚を、一人は、静岡県岩科村の鰹節製造業者に雇はれ居るが、雇主より此頃其技術の熟達に驚きたる。書面渡嘉敷校長に来り居るとの事にて、同人は来年水産講習所の現業科に入学し、節類製造の蘊奥を極めんと意気込み、その出身地なる知念村の補助を仰き度き旨、齊藤郡長まで間接に願出来れりと云う。一人は大分県の缶詰製造株式会社に雇はれ、食料の外六円の給料を得つつあるも、当人無形の利益は寧ろ給金以上にありと喜べる。書面来れる等仝校出身者の揃って相当の活動をなせるは、水産国の水産地たる、本県将来為め日出度き事ならん。