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島巡り

掲載年月日:1909/9/19(日) 明治42年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

島巡り
天南漁夫
八月七日 着後天候潮時面白からず空く釣具に背くこと茲に十日間今日は陰歷二十三日潮のソコリは六時の頃天氣もよく海もよく潮時も申分なければ今日はこそはと畫■過より餌其他の用意を整へ六時過小舟に乘りて新川濱より五六丁の沖に漕ぎ出で塲所を見立てゝアンカを下す
此邊の漁師の用■タマン糸は木綿若くは麻をよりその太きこと細引よろしくと云ふ程なり余か用るものは練糸の三ッよりにて長さは四ナ尋もあれども鳥賊引の糸より小しふとき位ひなれば舩頭■之を見て大に其成行を危ぶむ余が附近に岩さへなければ鯨でも釣あげて見せると笑へば彼は少しく嘲笑の氣味にて舷を枕にして眠る
絕へず小魚が餌をむしる感じはすれどもタマンらしき手應へはなし餌をかへること數度に及び九時頃に至り出し拔けに颯と引く口を合は間もあらはこそ只引かるゝ一方にて綸を握りたる手は恰も燒針金を握るが如し二十尋も延びしたる時敵の力漸く衰へ二尋手操りては一尋延し五尋手操りては二尋延し十四分間にして漸く舷に引つけ腮に指を入れて引揚けたり舩頭は物音に目を醒し無言のまゝ見物した■か腮下一尺五寸の大タマンのあがるを見て初めて稱賛の聲を發す續いて七寸位ひのヤマトピと一尺二寸のタマンを獲十一時頃歸る
正誤 前回の其間人間は家の誤                                                                                                                                                                                                                          

現代仮名遣い表記

島巡り
天南漁夫
八月七日 着後天候潮時面白からず、空く釣具に背くこと茲に十日間。今日は陰歴二十三日潮のソコリは六時の頃天気もよく、海もよく潮時も申分なければ、今日はこそはと画■過より、餌其他の用意を整え、六時過小舟に乗りて新川浜より五六丁の沖に漕ぎ出て、場所を見立ててアンカを下す。
此辺の漁師の用■タマン糸は木綿、若くは麻をよりその太きこと、細引よろしくと云う程なり。余か用るものは練糸の三つよりにて、長さは四ナ尋もあれども、鳥賊引の糸より小しふとき位いなれば、船頭■之を見て大に其成行を危ぶむ。余が附近に岩さえなければ鯨でも釣あげて見せると、笑えば彼は少しく嘲笑の気味にて舷を枕にして眠る。
絶えず小魚が餌をむしる感じはすれども、タマンらしき手応えはなし。餌をかえること数度に及び、九時頃に至り出し抜けに颯と引く口を、合は間もあらはこそ只引かるる。一方にて綸を握りたる手は恰も焼針金を握るが如し、二十尋も延びしたる時、敵の力漸く衰え二尋手操りては一尋延し、五尋手操りては二尋延し、十四分間にして漸く舷に引つけ腮に指を入れて引揚けたり。船頭は物音に目を醒し、無言のまま見物した■か、腮下一尺五寸の大タマンのあがるを見て、初めて称賛の声を発す。続いて七寸位いのヤマトピと、一尺二寸のタマンを獲十一時頃帰る。
正誤 前回の其間人間は家の誤