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島巡り

掲載年月日:1909/9/17(金) 明治42年
メディア:琉球新報社 1面 種別:記事

原文表記

島巡り
天南漁夫
八月五日 遠藤、上江洲、大濱、譜久村其他■氏宴を平得の民衆に催して吾々の旅情を慰めらる
八重山には旗亭酒櫻の會すべきものなし故に珍客をもてなすには宴を近在の農家に張ると云ふ
平得は四箇距る五六丁別に風光の賞すべきものなしと雖も家々富み子女優美にしてよく客をもてなす然れども天下の鼻下長諸君誤解する勿れ其間に決して猥褻■意味あることなし
余は近水と共に上江洲村長の東道にて夕刻より平得に赴むく家は新元屋と稱し敷物建具まで極めて淸潔なり料理は貝類蔬菜の珍を集め諸君自ら庖丁をとりたるもの酌■十四五歳の村孃の手
宴漸く酣なるに及び村孃の歌舞あり其歌は皆如何なる高貴の御前にても歌はるゝもの其舞も當世流の卑猥なる乱舞とは全く撰を異にするもの世人若し琉球固有の高尚優美なる舞曲を見んと欲せば去つて八重山に尋ねよ余は此舞を見此曲を聽き始めて思無邪の眞意を解したり斯くて午前一時に至り各歡を尽して歸る

現代仮名遣い表記

島巡り
天南漁夫
八月五日 遠藤、上江洲、大浜、譜久村其他■氏宴を平得の民衆に催して吾々の旅情を慰めらる。
八重山には旗亭酒桜の会すべきものなし、故に珍客をもてなすには宴を近在の農家に張ると云う。
平得は四箇距る五六丁別に風光の賞すべきものなしと雖も、家々富み子女優美にしてよく客をもてす。然れども天下の鼻下長諸君誤解する勿れ、其間に決して猥褻■意味あることなし。
余は近水と共に上江洲村長の東道にて、夕刻より平得に赴むく家は新元屋と称し、敷物建具まで極めて清潔なり。料理は貝類蔬菜の珍を集め諸君自ら庖丁をとりたるもの、酌■十四五歳の村嬢の手
宴漸く酣なるに及び村嬢の歌舞あり、其歌は皆如何なる高貴の御前にても歌はるるもの、其舞も当世流の卑猥なる乱舞とは全く撰を異にするもの。世人若し琉球固有の高尚優美なる舞曲を見んと欲せば、去って八重山に尋ねよ。余は此舞を見此曲を聞き始めて、思無邪の真意を解したり、斯くて午前一時に至り各歓を尽して帰る