キーワード検索

八重山群島(十五)

掲載年月日:1905/9/5(火) 明治38年
メディア:琉球新報社 2面 種別:記事

原文表記

八重山群島(十五)
      琉球新報 明治三十八年九月五日

商 業
▲八重山群島に於ける商業は他の産業の發達に比して著しき進歩の快史を有せり而かも台灣我に歸して以來大に運輸交通の便を得從て各種の商取引に於ても益々頻繁を極め商界の賑盛實に昔日の比にあらざるなり
▲現今本島の商界ハ石垣島大川村の海岸近き一部落を以て其中樞とし此處に他地方他府縣より來りて商業を營むもの百戸内外各々居を構へ専心斯業に從事しつゝあり
▲而して從來本群島に於ける商營業者は大小となく概して成効せるものゝ如し今其一例を徴せんに當時郡内第一流の實業家と稱せらるゝ某の如き去る明治二十六七年の頃まては僅かに牛馬骨の取引を爲し以て漸く渡世の烟を立て居たりし人なるに經營其宜しきを得て漸次資を増し産を殖し今や十年の今日に至りては自ら第一流の資産家を以て任じ人亦た其榮稱を許すに至れり其他微々たる小商人等が僅々數年の經營に依りて能く多大の資本を遺り以て屈指の資産家と推稱せらるゝに至りしもの其數枚擧に遑あらず而して此等の實例に徴して觀れば本群島亦た商業を營むに最も適當の地たるを識るに足り本業の將來多々益々繁昌の域に進むべきを信じて疑はざるなり
▲今本群島に於ける商取引の機關及び其店舗の主なるものを擧ぐれば、商業市場、中買商即ち海産物取扱所、及び滊船取扱所、輸出品取扱店、理髪所、洗湯屋、獸肉魚肉の賣場、諸工業製造家、料理店、宿屋、豆腐屋其他各種の小賣店等なりとす
▲尚ほ茲に三十七年度末の調査に係かる本群島重なる輸出入品の品目數量及び價格を示せば實に左の如し
(以下拔粋)
△輸 出
品 目  數  量   價  格
貝 殻   二一、五七〇〇   二、〇二五七
海神草    二、二二五〇     八八九
海 參      二六〇〇      二五二
鯣 六九〇〇      八九七
鳥 毛 三七五〇     一一〇〇
△輸 入
鰹 節  一〇〇       四五

現代仮名遣い表記

八重山群島(十五)  
      琉球新報 明治三十八年九月五日

商 業
▲八重山群島に於ける商業は、他の産業の発達に比して著しき進歩の快史を有せり。而かも台湾我に帰して以来大に運輸交通の便を得、従て各種の商取引に於ても益々頻繁を極め商界の賑盛実に昔日の比にあらざるなり。
▲現今本島の商界は石垣島大川村の海岸近き一部落を以て其中枢とし、此所に他地方他府県より来りて商業を営むもの百戸内外、各々居を構え専心斯業に従事しつゝあり。
▲而して従来本群島に於ける商営業者は、大小となく概して成効せるものゝ如し。今其一例を徴せんに、当時郡内第一流の実業家と称せらるゝ某の如き、去る明治二十六、七年の頃までは僅かに牛馬骨の取引を為し以て漸く渡世の煙を立て居たりし人なるに、経営其宜しきを得て漸次資を増し産を殖し、今や十年の今日に至りては自ら第一流の資産家を以て任じ、人亦た其栄称を許すに至れり。其他微々たる小商人等が僅々数年の経営に依りて能く多大の資本を造り、以て屈指の資産家と推称せらるゝに至りしもの其数枚挙に暇あらず。而して此等の実例に徴して観れば、本群島亦た商業を営むに最も適当の地たるを識るに足り。本業の将来多々益々繁昌の域に進むべきを信じて疑わざるなり。
▲今本群島に於ける商取引の機関及び其店舗の主なるものを挙ぐれば、商業市場、仲買商即ち海産物取扱所、及び汽船取扱所、輸出品取扱店、理髪所、洗湯屋、獣肉魚肉の売場、諸工業製造家、料理店、宿屋、豆腐屋其他各種の小売店等なりとす。
▲尚お茲に三十七年度末の調査に係かる本群島重なる輸出入品の品目数量及び価格を示せば、実に左の如し。
(以下抜粋)
△輸 出
品 目  数  量   価  格
貝 殻   二一、五七〇〇   二、〇二五七
海神草    二、二二五〇     八八九
海 参      二六〇〇      二五二
鯣 六九〇〇      八九七
鳥 毛 三七五〇     一一〇〇
△輸 入
鰹 節  一〇〇       四五