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八重山群島(七)

掲載年月日:1905/8/15(火) 明治38年
メディア:琉球新報社 2面 種別:記事

原文表記

八重山群島(七)
      琉球新報 明治三十八年八月十五日

水 産
八重山群島は四面環らすに洋々たる大海を以てし其海中に於ける遺利極めて多く眞に好箇の漁業地たり然りと雖ども現今本群島に於ける水産業の實況を窺ふに頗ぶる幼稚にして其漁撈の法製造の術共に未だ進歩せざるのみならず島民の營利的に斯業に從事するもの殆んど絶無と言ふも敢て過言にあらず而して目今本業に専心從事するものハ唯だ縣下島尻郡方糸滿村の漁民のみなり彼等は年々隊を組んて本島に出稼するものにして其漁業に巧みなる自ら天下の覇者を以て任じ其逆浪雪を吐くの間刳舟を自在に操縦し漁撈を爲すの健腕ハ他地方漁業者の遠く及ばさる所にして其妙眞に賞讃するの價値あり然りと雖ども其漁船漁具の不完全なる將來大に改良の必要あるを認む若し夫れ之に完全なる漁船漁具を供し其健腕をして益々振ハしめんか漁業者中恐らくハ天下之に匹敵するものなきに至らん是を以て世に資力あり經驗ある事業家にして此海上生活に最も妙を得たる彼等を漁夫に利用し將來本群島近海に於て■業に從事するに至らば其收利決して尠少ならざるを信ず現に古賀辰四郞氏の如き本島に於て熱心此業に從事し巨利を博しつゝあり同氏の大阪博覽會に出品せし本島産の具細工の如きハ時に非常なる好評を博し本島水産業の前途益々多望なるを世に紹介するに足れり
然り而して本島海産物にして其最も主なるものハ鱶鰭、鰹鯣、海參、夜光具、高尻具其他永良部鰻、海人草等なりとす
又海鳥には信天翁の捕獲近來盛んなり此鳥の羽毛ハ今日之を海外に輸出して其價頗ぶる高貴なることは世人の夙に知る所敢て多言を要せざるなり              
(未完)

現代仮名遣い表記

八重山群島(七)  
      琉球新報 明治三十八年八月十五日

水 産
八重山群島は四面環らすに洋々たる大海を以てし、其海中に於ける遺利極めて多く、真に好箇の漁業地たり。然りと雖ども、現今本群島に於ける水産業の実況を伺うに、頗ぶる幼稚にして其漁撈の法、製造の術共に未だ進歩せざるのみならず、島民の営利的に斯業に従事するもの殆んど絶無と言うも敢て過言にあらず。而して目今本業に専心従事するものは唯だ県下島尻郡方糸満村の漁民のみなり。彼等は年々隊を組んで本島に出稼するものにして其漁業に巧みなる。自ら天下の覇者を以て任じ、其逆浪雪を吐くの間刳舟を自在に操縦し漁撈を為すの健腕は、他地方漁業者の遠く及ばざる所にして其妙真に賞讃するの価値あり。然りと雖ども、其漁船漁具の不完全なる将来大に改良の必要あるを認む。若し夫れ之に完全なる漁船漁具を供し、其健腕をして益々振わしめんか。漁業者中恐らくは天下之に匹敵するものなきに至らん。是を以て世に資力あり経験ある事業家にして此海上生活に最も妙を得たる彼等を漁夫に利用し、将来本群島近海に於て■業に従事するに至らば、其収利決して少々ならざるを信ず。現に古賀辰四郞氏の如き本島に於て熱心此業に従事し巨利を博しつゝあり。同氏の大阪博覧会に出品せし本島産の貝細工の如きは時に非常なる好評を博し、本島水産業の前途益々多望なるを世に紹介するに足れり。
然り而して本島海産物にして其最も主なるものは鱶鰭、鰹鯣、海参、夜光貝、高尻貝、其他永良部鰻、海人草等なりとす。
又海鳥には信天翁の捕獲近来盛んなり。此鳥の羽毛は今日之を海外に輸出して其価頗ぶる高貴なることは世人の夙に知る所敢て多言を要せざるなり。
        (未完)