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◎運送會社と荷主
原文表記
◎運送會社と荷主
奢るものは久しからず運送合名會社は遂に荷主の團体により激烈なる反抗を受けて以て今や存亡を一戰に決せざるべからずの塲合に立至れり過日の紙上にも記載したる通り我輩は同社設立以來の行動に微じ其存在は我實業界の爲め害あつて利なきを確認するものなり其理由は後に說明することゝし爰に先つ荷主團体反抗運動の顚末を報道せん
▲當地の荷主か運送會社に對し大に不滿の念を抱き居ることは四月二十九日の紙上に記載したることなるが五月の七日に至りては荷主の重立ちたるもの大抵會合して何處までも反抗して解散せしめざれハ止ざるに決し爾來數度會合の末二十三名の同盟團体成立し運動の手始めとして琉球航路同盟本部に向ひ左の書面を出したり
從來貴本部同盟船舶に搭載する貨物ハ総て沖繩運送合名會社を經て積載致し來り候へ共近年商業の不振に伴ひ著しく經濟に憂ふべき現象を呈し候殊に縣下の砂糖に於ける消費税も今や却て耕作者の負擔に歸するか如き境遇に陥り爲め産地に於ける砂糖取引上にも甚數病痄を感じ不知不識不廉の買人をなさヾるを得さる事情多々有之候例せは両三年間内地に於ける賣價に微し一般糖商者の損失を蒙らざるはなく是れ斯業を經持するの困難なる明瞭の事實に御座候就ては挽回の策として吾々等合議の上一切の貨物を直積とし運賃に對する壹割の割戻しを得以て經濟を補ひ萎微衰頽の境を脫し安全に其の本分を尽すに至らば獨り吾々のみならず縣下の經濟界に不少利益を與へ可申かと存し候間事情御憐察の上何卒御採用相成度候此段相願候也
荷主團体に於てハ運賃割戻を主として同盟本部■要請したけれども其本旨は察より些々たる割戻しにあらず本部にして團体の要求を容認するに於ては公然衝突するに至らすして穏便に解散せしむるを得べしとの趣意なり
▲然るに同盟本部は團体の本旨を解せざるものか又他に考ふる所あるか五月廿三日付を以て左の回答をなせり
拜復各位益々御清勝之段奉賀候陳は貴地糖業維持の爲貨物直積並直積貨物に對する運賃割戻の義に關し去七日附を以て御照會の趣委細拜承仕候然處右御書面の趣旨は貨主各位に於て各船へ直積相成候ときは船主より附興する歩金を節約し得へしとの御考案より出てたるものと相考候へとも仲次人は單に貨物搭載の手續を爲すのみならず船舶に對する萬端の用務を辨せしむるものなるの故に貨主に於て假令直積相成候とも船主は社員を泒出し諸般の用務を處辨せしめさる可らさるにより仲次人に歩金を支拂ふと同樣費用を要するを以て貨主の直積に對し歩金を附興すること到底困難に有之候且又御要求の如き扱向に付ては未た他の各港に於ても甞て其例無之實行上種々の混雑を引起すへくと存候間全然御仝意致し難く折角の御要求に候へとも前陳の次第に有之候間不惡御了承相成度此叚及御答候也拜具
▲右の回答と同時に同盟本部ハ沖繩支部に向ひ左の書面を發したり
拜復去五月九日付を以て貴地古賀辰四郞氏外二十二名の貨主か貴部の手を經て當同盟本部に提出せられたる貨物直積に對する請願書正に落手仕候然る處仝氏等の要求の趣旨か目下貴地に於ける眞相と全く事實の上に相違致居候哉に承知致候就てハ其事實は別物とし右要求に對する回答として別紙寫の通り解答致候間右樣御承知相成度候尚又貴地貨物取扱の儀に關し貴地運漕合名會社以外の名義を以て同氏等の貨物を御取扱相成致候處右ハ當同盟に於て承認難致候間至急從前の通りの取扱に相成度右に付只今別紙寫の通り電報差上置候へとも爲念書面と以て相確候也匇々拜具
追伸
古賀辰四郞氏外廿二名に對し別封書面封へ致し置き候間貴支部より同氏へ御交付被成下度此段御依頼に及候也
▲右の回答に接するや荷主團体は更に協議を遂げ本月一日左の書面を以て別に運送取扱ひ業を開始せんことを要請したり
拜啓貴本部へ向け曩きに貨物直積之請願書を進達致し候處御採用相成難き旨趣了承仕候
由來貨物は總て運送合名會社を經て搭載せしも當地に於ける運送業の態度ハ内地に於ける同業者と全く其の趣を異にし各荷主は貨物の倉出より積入れを了へる迄て敢て運送業の手數を要せず殊に一朝天候のため貨物に危險を及ぼす憂ひあるべき塲合に相遇するも殆んど對岸の火災視なずが如き事實に於て全く直積の姿に御座候全体合名會社組織以來専橫增長して各荷主に對しては不親切にして今や荷主と運送業者との位置轉倒し甚しきハ成荷主に至りては却て運送業者の歡心を求むるが如き傾向を呈し頗る感情の融和を相害し候殊に一部の荷主と結託して非同盟船金州丸に貨物の積入れをなさんとせしも發覺して遂に中止なしたる事實あり豈不公平の所爲なしとせんや運送合名會社の専橫は吾々に於て避難するのみならず沖繩新報の如きも運送合名會社の専橫と題し社說に記事に大に輿論の喚起に相勤め候此等の事實ハ實地の擧動を目擊すれば蓋し思ひ央に過ぐるものあらん加之合名會社が冷淡専橫の結果往々商機を誤り不測の迷惑を蒙るもの多く亦布ひて縣下の産業發達上にも少なからざる妨害を釀すが如き事なきを保せず右等の理由により吾々は甘んじて運送合名會社をして貨物の取扱をなさしむるは断じて欲せざるものに御座候就ては貨物直積の件難相成候へば吾々に於て適任の者を選み運送取扱業を開始し各船に御迷惑を相掛ざる樣營業爲致度候隨て信認金を相要し候へば相當の信認金差入可申候間可卒御採許被下度奉懇願候拜具
▲先月二十四日航路同盟本部より各支部へ訓示たる電報あり左の如し
其地荷物は運送合名會社以外の取扱ひを固く斷ハる(即ち右書中にある電報)
荷主團体より再度要求の書面を發したるハ此訓電を發したる後の事なれは彼書面着阪の後は同盟本部が此要請に對し如何なる措置と出つるか知らされとも運送會社員の擧動を見ると何か賴む所あるものゝ如し
▲■■運送會社に於てハ荷主の團結が意外に鞏固なるを見て大に狼狽し百四十七銀行の取締役飛岡卬一郎氏の滯覇中同氏に中裁を依頼し氏ハ運送會社にては十一月迄に解散する代りに荷主ハ其團体を解きては如何と云ふ條件を提出したるも議未だ纒らすして氏遽かに歸■することゝなり爲に其儘遷延したる處去る一日に至り運送會社員木村榮左衛門氏外一名より飛岡氏の中裁條件も取消す始めハ來年二月にハ滿期解散の豫定なりしが本部よりの命令もあれは何處までも營業を繼續すると公言し態度忽ち一變せりと云ふ
▲於是荷主團体と運送會社とハ到底両立すべからさるの勢を形成し別項所載の通り古賀兒玉の二氏いよいよ大阪に出張することゝなりたるが同盟本部の意向を確かめたる上果して團体の要求を容れざるに於ては大に爲すことあらんと云ふ意氣込にて次便よりも更に運動委員両三名上阪する由 (未完)
◎荷主團体運動委員の上阪
古賀辰四郞、兒玉利吉の両氏は運漕會社に關し荷主團体の運動委員として琉球航路同盟本部に交渉の爲め上阪する事となり本日出港の薩摩丸より出發の筈
現代仮名遣い表記
◎運送会社と荷主
奢る者は久しからず、運送合名会社は遂に荷主の団体により激烈なる反抗を受けて、以て今や存亡を一戦に決せざるべからずの場合に立至れり。過日の紙上にも記載したる通り、我輩は、同社設立以来の行動に徴じ其存在は我実業界の為め害あって利なきを確認するものなり。其理由は後に説明することとし、爰に先づ荷主団体反抗運動の顛末を報道せん。
▲当地の荷主が運送会社に対し、大に不満の念を抱き居ることは四月二十九日の紙上に記載したることなるが、五月の七日に至りては荷主の重立ちたるもの大抵会合して、何処までも反抗して解散せしめざれば止めざるに決し、爾来数度会合の末二十三名の同盟団体成立し、運動の手始めとして琉球航路同盟本部に向い左の書面を出したり。
従来、貴本部同盟船舶に搭載する貨物は、総て沖縄運送合名会社を経て積載致し来りますへ共、近年商業の不振に伴い著しく経済に憂ふべき現象を呈します。殊に県下の砂糖に於ける消費税も、今や却て耕作者の負担に帰するか如き境遇に陥り為め、産地に於ける砂糖取引上にも甚敷病痄を感じ、不知不識不廉の買人をなさざるを得さる事情、多々あります。例せば、両三年間内地に於ける売買に徴し一般糖商者の損失を蒙らざるはなく、是れ斯業を経持するのは困難なる明瞭の事実にございます。就ては挽回の策として、吾々等合議の上一切の貨物を直積とし運賃に対する一割の割戻しを得以て経済を補い萎微衰頽の境を脱し安全に其の本分を尽すに至らば、獨り吾々のみならず県下の経済界に不少利益を与え可申かと存じますので。事情御憐察の上、何卒御採用なります、此段願います。
荷主団体に於ては、運賃割戻を主として同盟本部■要請したけれども、其本旨は察より些々たる割戻しにあらず。本部にして団体の要求を容認するに於ては、公然衝突するに至らずして穏便に解散せしむるを得べしとの趣意なり。
▲然るに、同盟本部は団体の本旨を解せざるものか又、他に考える所あるか五月二十三日付を以て左の回答をなせり。
拝復、各位益々御清勝之段奉賀です。陳は貴地糖業維持の為、貨物直積並直積貨物に対する運賃割戻の義に関し、去七日附を以て御照会の趣、委細拝承仕ます。然処右御書面の趣旨は、貨主各位に於て各船へ直積なりますときは船主より附与する歩金を節約し得べし、との御考案より出てたるものと考えますへども、仲次人は単に貨物搭載の手続為すのみならず、船舶に対する万端の用務を弁せしむるものなるの故に、貨主に於て仮令直積なりますども、船主は社員を泒出し諸般の用務を処弁せしめさる可らざるにより、仲次人に歩金を支払うと同様費用を要するを以て、貨主の直積に対し歩金を附与することを到底困難にあります。且又御要求の如き扱向に付ては、未だ他の各港に於ても、甞て其例無之実行上種々の混雑を引起すべくと存じますので。全然御同意致し難く、折角の御要求ですが前陳の次第にありますが、不悪御了承相成度此叚及御答です、拝具
▲右の回答と同時に、同盟本部は沖縄支部に向い左の書面を発したり
拝復、去五月九日付を以て貴地古賀辰四郎氏外二十二名の貨主か貴部の手を経て、当同盟本部に提出せられたる貨物直積に対する請願書、正に落手仕候。然る処、同氏等の要求の趣旨か目下貴地に於ける真相と全く事実の上に相違致居でしょうかに承知致します。就ては其事実は別物とし、右要求に対する回答として別紙写の通り回答致しますが、右様御承知となります。尚又貴地貨物取扱の儀に関し、貴地運漕合名会社以外の名義を以て同氏等の貨物をお取扱いとなりました処、右は当同盟に於て承認難致しますので。至急従前の通りの取扱になります度、右に付只今別紙写の通り電報差上置ますへども為念書面と以て確かめます也匇々、拜具
追伸
古賀辰四郎氏外二十二名に対し、別封書面封入致し置きますので。貴支部より同氏へ御交付被成下度此段御依頼に及びます也。
▲右の回答に接するや荷主団体は更に協議を遂げ、本月一日左の書面を以て別に運送取扱い業を開始せんことを要請したり。
拝啓、貴本部へ向け曩きに貨物直積之請願書を進達致します処、御採用相成難き趣旨了承仕します。
由来貨物は総て運送合名会社を経て搭載せしも、当地に於ける運送業の態度は内地に於ける同業者と全く其の諏を異にし、各荷主は貨物の倉出より積入れを了へる迄で、敢て運送業の手数を要せず殊に一朝天候のため貨物に危険を及ぼす憂いあるべき場合に相遇するも、殆んど対岸の火災視なずが如き事実に於て全く直積の姿に御座候。全体合名会社組織以来、専横増長して各荷主に対しては不親切にして今や荷主と運送業者との位置転倒し甚しきは或、荷主に至りては却て運送業者の歓心を求むるが如き傾向を呈し、頗る感情の融和を相害します。殊に一部の荷主と結託して、非同盟船金州丸に貨物の積入れをなさんとせしも発覚して、遂に中止なしたる事実あり。豈不公平の所為なしとせんや、運送合名会社の専横は吾々に於て避難するのみならず、沖縄新報の如きも運送合名会社の専横と題し、社説に記事に大に輿論の喚起に相勤めます。此等の事実は実地の挙動を目撃すれば蓋し思ひ央に過ぐるものあらん加之合名会社が冷淡専横の結果、往々商機を誤り不測の迷惑を蒙るもの多く、亦布いて県下の産業発達上にも少なからざる妨害を釀すが如き事なきを保せず。右等の理由により、吾々は甘んじて運送合名会社をして貨物の取扱をなさしむるは、断じて欲せざるものに御座います。就ては貨物直積の件難なりませへば、吾々に於て適任の者を選み運送取扱業を開始し、各船に御迷惑を相掛ざる様営業為致度候。随て信認金を相要し候へば相當の信認金差入可申ますので可卒御採許被下度奉懇願います、拜具
▲先月二十四日、航路同盟本部より各支部へ訓示たる電報あり左の如し
其地荷物は運送合名会社以外の取扱いを固く断わる(即ち右書中にある電報)
荷主団体より再度要求の書面を発したるは、此訓電を発したる後の事なれば、彼書面着阪の後は同盟本部が此要請に対し、如何なる措置と出づるか知らされども、運送会社員の挙動を見ると何か頼む所あるものの如し
▲■■運送会社に於ては、荷主の団結が意外に強固なるを見て大に狼狽し、百四十七銀行の取締役飛岡卬一郎氏の滞覇中同氏に中裁を依頼し、氏は運送会社にては十一月迄に解散する代りに荷主は其団体を解きては如何、と云う条件を提出したるも、議未だ纒らすして氏遽かに帰■することとなり為に其儘遷延したる処、去る一日に至り運送会社員木村栄左衛門氏外一名より飛岡氏の中裁条件も取消す。始めは来年二月には満期解散の予定なりしが、本部よりの命令もあれは何処までも営業を継続すると公言し、態度忽ち一変せりと云う。
▲於是、荷主団体と運送会社とは到底両立すべからざるの勢を形成し、別項所載の通り古賀、児玉の二氏いよいよ大阪に出張することとなりたるが、同盟本部の意向を確かめたる上、果して団体の要求を容れざるに於ては大に為すことあらんと云う意氣込にて、次便よりも更に運動委員両三名上阪する由 (未完)
◎荷主団体運動委員の上阪
古賀辰四郎、児玉利吉の両氏は運漕会社に関し、荷主団体の運動委員として琉球航路同盟本部に交渉の為上阪する事となり、本日出港の薩摩丸より出発の筈。