キーワード検索
●圖南軍の大勝利
原文表記
●圖南軍の大勝利
先月十八日の本紙に記したる如く熊本縣人山熊惟男氏一團の圖南軍ハ風雨晦冥の間に續を那覇港に解き激浪怒濤を衝いて南洋遠征に向ひたるが一行ハ先頃無事に先島(南琉球海の一島)に着し第一第二舜天丸(漁船)の打揃て來るを待ち居るの間何がさて雄心勃々たる逸夫の面々三日も四日も閉籠り居らるべきにあらずとて野田中林の両氏ハ癪霧と冒して陸上探見と出掛け其の結果數百町歩の良森林を見出し、又一方なる山隈・森永・北島の三氏ハ先着第一舜天丸乘組の漁夫數名と共に逆浪を蹴て沿岸を渉獵したるに案に倍したる幸ありて鱶の長五間内外のもの二十餘尾(鰭のみにても時價に見積り八十圓前後其の他魚皮魚油等澤山)鮫の長さ三間内外の者數尾と獲たりとの事にて戯むれ半分の仕事かくも幸を得たるは誠に首途よき事なりとて一行の人達ハ踊躍して大に喜び居たるが其内第二舜天丸も無事に着したるを以ていよいよ去月三十日無人島なる魚釣島へ向け先島より渡航する事となり二艘の漁舟ハ勇と鼓して渺々たる支那海へ向け乘出したりと云ふ金色人種の名に背かず益々収利の大ならんことを祈る
現代仮名遣い表記
●図南軍の大勝利
先月十八日の本紙に記したる如く熊本県人山熊惟男氏一団の図南軍は、風雨晦冥の間に続を那覇港に解き激浪怒濤を衝いて、南洋遠征に向いたるが一行は先頃無事に先島(南琉球海の一島)に着し、第一第二舜天丸(漁船)の打揃て来るを待ち居るの間、何がさて雄心勃々たる逸夫の面々、三日も四日も閉籠り居らるべきにあらずとて、野田中林の両氏は癪霧と冒して陸上探見と出掛け、その結果数百町歩の良森林を見出し、又一方なる山隈・森永・北島の三氏は先着第一舜天丸乗組の漁夫数名と共に、逆浪を蹴て沿岸を渉猟したるに案に倍したる幸ありて、フカの長五間内外のもの二十余尾(ヒレのみにても時価に見積り八十円前後その他魚皮魚油等沢山)鮫の長さ三間内外の者数尾と獲たりとの事にて戯むれ、半分の仕事かくも幸を得たるは誠に首途よき事なりとて、一行の人達は踊躍して大に喜び居たるが、その内第二舜天丸も無事に着したるを以ていよいよ去月三十日、無人島なる魚釣島へ向け先島より渡航する事となり、二艘の漁舟は勇と鼓して渺々たる支那海へ向け乗出したりと云う。金色人種の名に背かず益々収利の大ならんことを祈る。